日本でよく使われ、なおかつ、いかにも日本的ともいえる言葉が「空気読め」(KY)ではないだろうか。
そもそも「空気読め」って一体何?
「空気読め」の「空気」とは、「その場の雰囲気」であることは、辞書にもある。ところが、「読む」という動詞が付いとたんに、極めて曖昧な言葉になる。辞書には載っていないし、Wikipediaを見てもぱっとしない。
私なりに「空気を読む」という言葉を辞書的に説明してみた。
- 空気を読・む 【くうきをよ・む】
- ①社会通念としてのマナーやTPOに即した言動を取ること。
②その場にいる人間、もしくは世間の傾向によって言語化されていない期待感を読み取り、それに呼応した言動を取ること。
◆多くの場合は、否定形か命令形で使われ、非難する意味合いが込められているケースが多い。「空気読めない」「空気読め」を略して「KY」とも書かれる。
① マナーやTPOをわきまえない人を非難する「空気読め」
この意味で使われる実例を挙げてみよう。
- 食事中に品のない話題をすれば、「空気読めよ!食事中だろ」
- みんな並んでいるときに割り込めば、「空気読めよ!みんな並んでるだろ」
- 空いている道をトロトロ走っていたら、「空気読めよ!後ろがつかえてるだろ」
上で挙げた例は、空気云々というより、ただのマナーである。日常的にこういった行動を取る人であれば、「空気が読めない人」でなく、「マナーがなってない人」か「マナーを知らない人」という言い方が普通であろう。
② 多数派の思い通りにならない素因を非難する「空気読め」
この意味で使われる「空気読め」は、世間様が期待しているのに、それに呼応しなかった集団や個人を非難する時に使われる。同調圧力か、同調圧力に屈しなかった者を責める言葉とでも言おうか。うーむ、なかなか説明するのが難しい。日本人にも難しいのに、外国人には、なおさら理解することすら難しいのではないだろうか。
あなたは空気が読めますか? 日本社会の奇妙な論理 中国網
「KY」という言葉は2007年の流行語大賞にノミネートされた。KYという言葉が一般的になり始めたのはこの頃からである。「空気」という概念自体は古くからある。
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日本と海外の違いは「KY」な人への対応と寛容度
「(場の)空気」は日本に限らず、人間社会であれば、どこにでも存在する。そして、「空気を読めない人」も、日本に限らずどこにでもいる。日本と海外の違いは、「空気を読めない人」に対する周りの対応と寛容度である。
海外では、空気を読めてない人がいた場合、その人に何をして欲しいのか、どうすべきなのかということを具体的にはっきりと伝えるのが普通である。
①で挙げた実例を見本にしてみると、次のようになる。
- 食事中に品のない話題をすれば、「空気読めよ!食事中だろ」
→「今は食事中なんだから、そういう話題は後にしよう」 - みんな並んでいるときに割り込めば、「空気読めよ!みんな並んでるだろ」
→「ちゃんと並ぼうよ」 - 空いている道をトロトロ走っていたら、「空気読めよ!後ろがつかえてるだろ」
→「前が空いてるし、後ろつかえてるみたいだよ。もっとスピード上げた方がいいよ」
「空気読め!」を英語に直訳すると“Read the atmosphere!”である。日本通の英語ネイティブスピーカーの友達に意味が分かるかどうかを聞いたところ、「うーん、何となくは分かるんだけど、使わない。KYな人がいたら、ちゃんと指摘するよ」といった答えが返ってきた。日本の「空気読め」みたいな曖昧で万能な言葉は存在しない。
※ ①の意味での「空気読め」にもっとも近く、英語圏でも通用する言い回しは“Behave yourself!”であろう。これは子供をしつける「行儀良くしなさい」という意味。
「空気」に支配された息苦しい日本社会
「空気読め」という言葉は、集団主義の日本が生み出した、曖昧さを好む日本的な言葉の代表選手ではないだろうか。私は、その言葉の中に、相手の人格を否定し、批難するような冷たい印象を感じてしまう。
あなたが、①のマナーやTPOをわきまえないという意味でのKYな人がいる状況に出くわしても、「空気読めよ」と言うのではなく、その人にどういった行動を取ってほしいのか具体的に指摘してほしいと思う。漠然と「空気読め」と言われても、言われた方は、具体的にどういった行動が空気を読めていなかったのか、何がマズかったのかは理解していないケースが多い。
②の同調圧力としての「空気読め」 は、日本人がもっと「異」に対して寛容になるべきだと思う。人はひとりひとり違うのだから、その「個」を尊重しよう。
空気を読むことに過度にこだわり、自分たち多数派の意に沿わないことを何でも「KY」と呼んで排撃する日本社会が、日本を息苦しい国に変えているのではないだろうか。
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