海外脱出と聞くと、「逃げること」とか「日本や家族を捨てること」って言う人がいる。しかし、それは間違いである。
海外“脱出”という言葉は語弊があるかもしれないので、ここにでは海外移住と言い換えよう。私が「脱出」という言葉は、社畜労働や不安定な雇用状態といった苦境から脱するという意味で使っている。日本を棄てる、家族を捨てるという意味ではない。
地方在住者の上京先が海外になっただけ
戦後から現在に至るまで、地方に在住している人が進学や就職のために地元を離れ、東京や大阪などの大都市に来るということは決して珍しいことではない。地方から進学のために上京し、卒業後は東京(首都圏)で就職して、東京で結婚し、東京で家を持ち、盆や正月には家族を連れて実家に帰省する。盆正月の帰省ラッシュは、もはや見慣れた光景だ。海外移住とは、「東京」にあたる場所が海外になっただけに過ぎないと私は思っている。
地方から上京する人を「東京に逃げた」とか「故郷や家族を捨てた」とかは普通は言わないだろう。行き先が海外になったからといって、「捨てた」など言われる筋合いはない。
生まれ育った国以外で就職するなんて、海外では当たり前
海外の大きい都市は、その多くが多国籍化している。単なる出稼ぎ労働者もいれば、移住してきた人もいる。私の住んでいる街にも、様々な人種や国籍の人が住んでいる。もし、彼らに「あなたは祖国や家族を捨てた」などと言えば、間違いなく怒られるだろう。
私の外国人の友人からも「私の兄は結婚してカナダに行ったわ」「ドイツには私のおじが住んでるのよ」「ボクはアメリカからやって来たんだ」といった話を本当によく聞く。
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「海外移住=家族や祖国を捨てる」という考え方は時代錯誤
昔は一度海外に行くと、祖国に戻ってくることはおろか、家族や友人と連絡を取ることすら容易ではなかった。航空網もそれほど発達していなかったし、ネットも存在しなかった。そういう時代に、海外に移住するとなれば、相当な努力と覚悟が必要だったことは想像に難くない。
しかし、今日はどうだろうか?帰省のための往復航空券は決して高価な代物ではないし、インターネットのおかげで友達や家族とは常に連絡を取り合える。高度に発達した交通網や通信網は、世界を小さくし、人やモノを流動的にした。
自分の生まれた土地に関わらず、自分に合った場所や自分の能力を活かせる場所に行くのは、海外ではもはや当たり前だ。これこそが本当のグローバリゼーションである。
このグローバリゼーションの時代に、海外に出て行く日本人を「日本を棄てた」「家族を捨てた」と言って批難している人たちを見ると、島国根性から抜け出せていないのだなぁと残念に思ってしまう。
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大切なことは、どこに住むかではなく、どうすれば幸せになれるか
今の日本の労働環境や雇用情勢は、お世辞にも魅力的とは言い難い。このまま非正規雇用という不安定な立場に甘んじたり、ブラック企業で奴隷のような労働を強いられたりしながら、閉塞感漂う日本社会で生きていくより、海外に出た方が物質的にも精神的にも豊かになれるのではないだろうか。私はそう考えたからこそ、海外に出るという道を選んだ。逆に、今の日本での生活に満足しているのなら、海外に出る必要なんてどこにもない。大切なことは、どこに住むかではなく、どうすれば幸せになれるかではないだろうか。
海外に出ることは、逃げることでも、捨てることでもない。よりよい生活を手にするための挑戦である。だから、海外に出た方が、あなたにとって幸せになれるなら、あるいは、幸せになるチャンスが大きいと感じるなら、堂々と挑戦してほしいと私は思う。海外に行くことを「逃げる」なんて声は無視してよい。
海外に出ることで、客観的に日本の良いところも悪いところも客観的に見ることができるようになる。海外に出てみて、やっぱり日本がいいということになれば、いつでも帰ってくればいい。
「おもてなし」があれば「おみおくり」があってもよい
昨年、五輪招致スピーチをした滝川クリステルさんの「おもてなし」が流行語になった。「おもてなし」が客を心から歓迎する精神だとすれば、新しいことに挑戦する仲間を励まし、送り出す「おみおくり」があってもいいではないだろうか。
私は、海外に行った日本人を、日本を棄てた人たちと見るのではなく、海外で活躍している人たちと見て欲しいと思う。
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