海外にいると、日本の労働環境や雇用慣行は、つくづくガラパゴス化しているように見える。いや、ガラパゴス化を通り過ぎて、一種の宗教になっているのではないかとさえ思う。
「労働(仕事)=宗教」と考えれば妙に納得がいく日本の仕事観
非効率の象徴ともいえる手書きの履歴書も納得がいく。完成寸前で間違えたら、修正液を使うことすら許されず、最初から書き直しなんて、どう見ても罰ゲームだが、出家するための修行だと考えれば納得がいく。仏教には、経文を書き写す写経というものがあるが、写経をPCで作成する人がいないのと同じである。修行なんだから、結果を出すことではなく、時間をかけて苦労することに意義があるのだ。社畜にとっては、履歴書なんて労働教への出家志願書なんだから、PCで作るなんてもってのほか、バチが当たるぞってか。(笑)
新卒至上主義も労働教と考えれば納得する。就職活動は、大学3年生の12月と異様に早くから始まるのだが、「うちの宗派に取り込みたい」(自社のカラーに染めたい)という企業の思惑があるのだろう。実際の宗教でも、宗派による対立はすごいものがある。労働教でも、社会人を経験したり、既卒になった時点で宗派が違う「異教徒」になるわけで、異教徒の入信は許さないというわけか。(笑)
「労働教」は外国人から見ればカルト
マラソンや穴掘り(笑)のような理解不能な新人研修、毎朝行われる社歌斉唱や大声出す社訓唱和など、どれもこれも外国人の目から見たら異様に見える。スーツに身を包んだ社員が一斉に大声で社訓を唱和している姿を、日本のことを知らない外国人に説明なしに見せたら、本気でカルトと信じ込みそうだ。
他にも、妻が出産するのに仕事を優先して立ち会えない、病気なのに一日分の給料を上回るタクシー代を払ってまで出勤しなければならない*1、体調に異変を感じているのに仕事が忙しくて病院に行く暇がないなど、理解に苦しむ労働教の教義を挙げていては枚挙に暇がない。
連日定時退社、有給完全消化、有給病欠制度ありが当たり前の、ワークライフバランスが取れた海外の職場で働いている外国人から見れば、日本の労働環境は、どれもこれも信じられないのが現実だ。外国人に日本の労働環境の話をすると、みんな驚きを隠せない様子で、「いったい何が日本人をそこまで働くことに駆り立てるのか」と疑問を持 つ。そこまで崇拝しなければならない「仕事様」(笑)って一体何なんだと、日本人である私ですら疑問に感じてしまう。
まとめると、履歴書やエントリーシートは出家志願書、ドブネズミ色のスーツは法衣や祭服、社歌は賛美歌、社訓は読経、飲み会は説法、社畜は労働教原理主義者、「シャカイ人」は労働教信者、仕事様は労働教の救世主といったところか。こう考えると、‘Spot on’ だ。(笑)
もちろん労働教なんていうのは冗談だが、そんな冗談ですら真実に見えてくるほど、海外から見た日本の労働環境は、トチ狂っているんだよな。
洗脳されていることに気付かない恐ろしさ
カルトの怖いところは、自分たちが洗脳されている、世間の常識からかけ離れているということを当人が気付いていないことである。しかも、布教活動に熱心なので余計にたちが悪い。
私が子供の頃、オウム真理教による一連の事件が世間を騒がせた。連日放送されたニュースを見て、「こんなに頭がよくて立派な人が、どうしてこんな ことをしたのだろう」と思ったものだ。学校では、どこにでもいるクラスのムードメーカー的な生徒が、「しょーこしょーこしょこしょこしょーこ♪」と歌っていたが。(笑) 思い返すと、カルトと恐ろしさを改めて痛感させられる。
社畜の目を覚まさせるには
労働教というカルトに汚染されている社畜の目を覚まさせるには、どうすればいいのだろうか。脱社畜キャンプ(笑)にでも強制参加させるのが一番だが、さすがにそういうわけにはいかないので、繰り返し啓蒙活動を行っていくしかないだろう。
何十年かかるかは分からない。だが、私たちが新しい一歩を踏み出さなければ、何も変わらない。
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