圧迫面接というものがある。面接官が候補者の人格を否定するような質問をして、候補者を心理的に圧迫し、「ストレス耐性」という名の理不尽に対する我慢力を測るというものである。
こんなにひどい圧迫面接
具体例を挙げると以下のようなものだ。
「田舎の秀才に多い自意識過剰の高飛車女だな」
「何でもできると思っているんだろう。自信満々だな」
「生涯賃金三億払う価値無い」
「人格欠落人間だな」新卒面接で「人格欠落人間だな」不況下で企業は高飛車なのか? (J-CAST)
次は別のケースである。
内定者懇親会へ出席したところ、最終選考時の面接官であった総支配人から以下のようなお言葉を頂いたのです。
「今、ここに集まっている皆さんは、私からの意地悪で悪質な質問に耐え抜いた方々という事ですね。社会人になると、様々な場面で理不尽なクレームやお叱りの言葉を頂く機会が増えます。その時に皆さんはどのような応対を行うのか、この部分を今回の最終面接を通じて確認させて頂きました。」
就活「圧迫面接」の真意とは?怒鳴る、全否定…うつ発症するケースも (SankeiBIZ)
「カネを払っている方が偉い」という考えがモンスター客を生む
学校を卒業し、働くようになれば、嫌なこともたくさんある。特に、接客であれば、毎日客と接することになる。以前のエントリー「金を払っている方が偉いという考えは社畜に通ず」で書いたとおり、日本の場合、金を払う方が偉いという不条理な図式が成り立っている。そのため、客からどれだけ理不尽なクレームを付けられても、常に低頭平身にならなければならない。正にその見本ともいえる事例が、昨日(2013年10月8日)放映されたNHKクローズアップ現代で取り上げられた。
都内の駅で、改札を強引に通り抜けた客を呼び止めたときのことです。 客は逆に怒りだし、誠意を見せろと要求。 真冬の路上で、20分にわたって土下座を強いられました。
鉄道会社の男性:
「間違ったことでも、お客さんが言えば、黒いものでも白だと。お客様は悪くないですよ、社員が悪いと終始していくので、謝るのがサービスのひとつになっている。」客という立場を利用して、無理な要求を押しつけるケースは年々増え続けている、といいます。
もし、そこで逆ギレして客に対して暴言でも吐こうものなら、ネットで晒されたり、上層部へ苦情を入れられたりして、結果として火に油を注ぐ結果となる。マスコミで報道されたら、たとえ会社に非がなくても、会社の信頼を大きく損なうことになる。
モンスター客がいるからストレス耐性が必要になる
客や上司から大声で理不尽なことを怒鳴りつけられても、決して逆らうことなく、ひたすら詫びに徹しなければならない日本社会は、私は常々異常だと思う。
海外の職場では、客だろうが上司だろうが、自分が納得できないことは、堂々と反論する。感情的になって暴言を吐くのは論外であるが、筋が通った意見で自分の正当性を主張するのは当然であると考えられているからだ。
海外ではありえない圧迫面接
海外には日本のような人格を否定する圧迫面接は存在しない。私の友達に圧迫面接の話をすると、非常に驚かれて「よく面接官は殺されないね(笑)」「オレの国だったらすぐに訴えられる」って言われた。
海外で、面接で候補者の切り返し能力を探りたければ、あくまで論理的に攻めてくるのが普通だ。候補者の履歴書や話した内容の矛盾点や曖昧な点をこれでもかと質問してくる。それに対して、候補者は的確かつ迅速に答えていかなければならない。
ちなみに米Googleの面接では、「スクールバスの中にゴルフボールはいくつ入ると思いますか?」「シアトルにはいくつのマンホールがあると思いますか?」といったことが聞かれると以前に話題になった。いかにもIT企業らしい質問だ。一見、答えるのに窮するが、頭の回転が速い人であればすぐに答えることができるだろう。
- 作者: ウィリアムパウンドストーン,松浦俊輔
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圧迫面接が必要なのは労働環境がストレスフルな証拠
圧迫面接の目的とされる「ストレス耐性」が必要なのは、その会社がストレスフルな労働環境であることの証拠だ。圧迫面接が多くの会社、とりわけ接客業で行われているのは、その業界がストレスフルなブラック業界であることの証明に他ならない。
もし、あなたが、わずか数十分間の圧迫面接を耐え抜き、「ストレス耐性」があると見なされ、内定を手にしたしても、入社後に待っているのは、面接とは比較にならないほど大きく、そして果てしなく続くストレス社会である。そのストレス社会は、長きにわたり、あなたを精神的にむしばんでいき、鬱病に追いこむ。
シャチククエストⅢ〜そして過労死へ…
日本の圧迫面接は、客がモンスターと化し、会社内で社畜が我が物顔で跋扈しているような呪われしクソ労働環境が生み出しているのだ。
ブラック企業に内定をもらった時点で、ドラゴンクエストの呪いの曲が脳内再生され、呪われたクソ労働環境で働くことを覚悟しなければならない。しかも呪いを解くのは並大抵のことではない。(笑)
勇者様が現れて、「日本の悪しき慣習」というモンスターをやっつけて、「ワークライフバランス」という平和を取り戻してくれる日はいつになるのだろうか。
私は「にげる」という選択をした。(笑)