何気なくGoogleニュースを見ていたら、「『わざわざ有休取ったのに家にいたの?なら出勤しろ』 部下の休日に口を出すトンデモ上司に震撼」というキャリコネニュースの記事を目にした。以前にもゲームの発売日に有休の是非についての記事があったのを思い出した。
一瞬、「まだこんなことで不毛な議論してるんだぁ」と思ったが、日本の会社は相変わらず、休むことには不寛容なんだなぁとつくづく感じた。
逆に聞きたいのだが、有給はどんな時に使えばよいのだろうか? もしかして、40度近い熱があってとても仕事に行けない時に「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」と低頭平身になりながら、「私の体調管理がなってないゆえに会社を休んでしまい、会社に多大な迷惑をかけてしまった」と罪悪感に駆られながら使わなければいけないのだろうか?
有給は労働者の当然の権利
ゲームの発売日だろうが、遊びだろうが、小旅行だろうが、ただ単にダルいからだろうが、有給を使うことにいちゃもんを付けられる筋合いはどこにもない。なぜなら、有給休暇は労働者に与えられた当然の権利だからである。法律で認められた正当な権利を行使するのだから、後ろめたい気持ちになる必要はない。
こういうことを言うと、必ずと言っていいほど「権利を主張する前に義務を果たせ」と言ってくる社畜がいる。
権利と義務の関係は、多くの日本人が勘違いしている。ずっと以前にも書いたが、権利とは義務を果たさなければ与えられないという類いのものではない。権利を持っている人が、それを行使すると、それに応じなければならない義務が生じる。ただそれだけのことだ。
例えば、債権を持っている人が債務者に弁済を求めた場合、弁済する義務が生じる。選挙権を持っている人が、投票可能な日時に投票所に行くと、投票させる義務が生じる。有給の例に当てはめると、従業員が有給の権利を行使した場合、使用者は有給を与える義務が生じる。
※ 有給休暇は、6ヵ月以上働いて、出勤率が8割を超えている時点で、雇用形態にかかわらず発生する。
したがって、従業員の有給使用を難癖付けて認めないとなれば、義務を果たしていないのは企業の方である。
有給は「遊ぶため」にある
海外には、有給病欠(sick leave)がある。これは本来の有給とは別に与えられる、病気(軽い風邪や体調不良を含む)の時に使えるものだ。数日以内であれば、医師の診断書も不要だ。家族が病気の時でも使える。病気の場合は、有休を使わずに、この有休病欠を使っていく。なぜこういう制度があるかというと、有給の目的は「遊ぶため」だからだ。
「会社を休んで遊ぶ」と聞くと、怠けるとかサボるとかといったネガティブな印象を受けるが、それは大きな間違いだ。休むことで、心身共にリフレッシュをし、英気を養うことができる。その方が、労働者のパフォーマンスも上がり、会社全体の生産性が上がる。
逆に、多くの日本企業のように、連日連夜残業させたり、有給を捨てさせたり、病気の場合でも休ませなかったりすると、当然労働者のパフォーマンスも上がらない。ストレスが溜まっている状態で良い仕事は期待できない。休ませることは、労働者のためのみならず、会社のためにもなる。
企業は従業員が休むことを前提にすべき
海外では、従業員が休むことを前提に経営するのが普通である。数日程度の突発の休みなら、いつ発生しても問題ないようにゆとりを持っているし、休みが発生しても、同僚たちで穴を埋め合う。数週間単位の長い休みでも、事前に申請していれば取れるように、仕事やシフトなどをうまく調整する。これが世界標準である。遊びでなくても、従業員も生身の人間である以上、いつ病気になったり、怪我をしたりするか分からないのだから。
※ 海外でもクリスマスや新製品の販売時期などの繁忙期は休暇取得を制限することがある。
しかし、多くの日本企業ではそうではない。ギリギリの人員で会社を回しているからか、従業員が休まないことを前提にしている。もっとも、そんな企業でも、始業時間ギリギリに行くと、多くの場合、「もっと時間に余裕を持って来い」と怒られる。企業もゆとりを持つことの大切さは分かっているではないか。従業員の出勤時間にはゆとりを求めるにも関わらず、自社の人員確保や勤務にはゆとりを持たないのだろうか。
始業時間は厳しいけど、就業時間はゆるゆるというケースと似ている。(1分の遅刻でも給料は差し引くにもかかわらず、残業代は払わなかったり、30分単位で30分未満は切り捨てにしたりする)
ダブルスタンダードの典型例であるが、こういう態度は「インテグリティ(integrity)=一貫性がない」と見なされ、教養ある人間とは思われない。
いい加減に労働信奉はやめよう
たかが有給、されど有給。もっと気兼ねなく、1〜2日の突発から、数週間の長期まで取れるようにならないものだろうか。「働くこと=善、休むこと=悪」という労働信奉はやめて、休むことも、働くことと同じくらい大切なことだということに、多くの日本人に気付いて欲しい。
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