「ブラック企業」や「社畜」という言葉が世間を賑わすようになって久しい。労働環境は改善されたのかといえば、改善には程遠い。それどころか、おかしな方向に向かっている。
残業代さえ払えばいいというものではない
「サービス残業が問題なんだろ。要は払えばいいんだろ払えば。全額払ってやるから、しっかり働けよ。残業代払うんだから、残業の拒否は認めないよ」
「残業はあって然るべき」
「残業は多いが、うちは1分単位で全額払っている。ブラック企業なんかでは断じてない」
こういう風潮になっているような気がする。
極めてよくない考え方だ。残業代が払われるかどうかが問題なのではなく、残業自体が日常的に発生していることが問題なのである。(サービス残業なんか犯罪行為で論外。正当化できる余地は微塵もない)
残業代が全額支払われたとしても残業はイヤ!
短期間でがっつり稼ぎたいバイトや出稼ぎ外国人労働者であれば、残業は大歓迎であろう。しかし、私に言わせれば「残業代が例え今の3倍支払われたとしても、残業なんかまっぴらごめん」である。
仮に、年収2,000万円稼いだとしても、連日連夜残業・休日出勤ありで、一体いつそのお金使うの? 何にそのお金使うの?
老後の蓄え? クルマ? マンション? ブランド品? 子供のお受験? 生命保険?
ふーん。それで本当に幸せなの? ただの自己満足ではなく。
たとえ、いいクルマを買えなかろうが、都内一戸建てを買えなかろうが、ワークライフバランスを取れた生活の方が、ずっと幸せだと思う。贅沢はワークライフバランスを犠牲にしない範囲で求めればよい。
外国人も同意見。以下は、ある新興国の人との会話である。
A「日本だと、月30万円はもらえるよ」
B「わーお、日本で働きたいな」
A「でも、日本の労働環境は、…(略)…なんだよ」
B「やっぱり、遠慮しておくわ」
ずっと以前に日本の労働環境をネタに、ドラゴンボールを題材にしたジョーク記事も書いたので、参考にしてもらいたい。
海外で残業が発生するのは例外
「海外で残業はないのか?」と言われれば、あることはある。しかし、あくまでも例外である。
例えば、新製品の発売時期やクリスマス前の繁忙期は、従業員が残業したり、休暇取得を控えたりしないと回らなくなる。そういう時は、従業員も分かっているので協力する。残業があるといっても、日本みたいに月100時間とか、30日ぶっ通しで勤務といったムチャクチャな働き方はない。
「海外の有名企業が従業員の休暇取得を禁止した。新製品発売が近いとみられる」という記事*1*2を見かけることがある。裏を返せば、普段は休暇が取れているということである。これがグローバルスタンダード。
日本だと定時退社の方が例外、休暇は病気とかやむを得ない時のみ認められ、遊びのための休暇取得なんてもってのほかになっている。
ちなみに、時期に関わらず連日連夜働いている人はどこの国でもいるが、彼らはエグゼクティブと呼ばれる上級管理職である。職務・責任・権限・報酬などあらゆる面において、一介の雇われの身に過ぎない従業員とはまったく異なる。
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理想は残業ゼロ社会、しかし実現にはほど遠い
目指すべきは「サービス残業ゼロ」ではなく「残業ゼロ」である。残業したくても残業できない社会、休日出勤したくても休日出勤できない社会。残業や休日出勤しなくても機能していく社会だ。そんな社会を実現していくべきではないか。
※連日定時退社・休日出勤なし・有給完全消化・病欠有給ありは海外では当たり前。
しかし、現実はどんどん遠ざかっている。「ブラック企業」という言葉が日常化したのとは裏腹に。そう、深刻な人口減とそれに伴う人手不足である。政府は、難民・移民は受け入れない方針*3*4のため、人手不足は今後ますます悪化することはあっても改善することは期待できない。
人手が足りないのに、人が集まらない。そうなると、そのしわ寄せは現在すでに働いている労働者にくる。辞めたいの辞めさせてもらえなかったり、連日連夜残業させられたり、休日出勤させられたり、休暇を取らせてくれなかったりといった具合だ。
※本来学業を優先させるべき学生にまでしわ寄せがきている。*5
残業代が全額支払われるようになったり、賃金が大幅に上がったりしても、休みが取れないとまったく意味がない。人間は働くために生きているわけではなく、楽しく幸せに生きるために働いているのだから。
経営者「残業は結構あるよ。残業代はきっちり全額支払われている。何か問題でも?」
労働者「残業代が支払われるようになったので、貯金はどんどん貯まっていくよ。でも、仕事が忙しいので買うものがないんだよね。遊ぶ時間もないんだよね。老後の資金かな。僕らの世代では、年金はもらえるかどうか分からないしね。」
安倍晋三「一億総活躍! 一億総活躍! 一億総活躍! 一億総活躍! 一億総活躍!いち……」
何か変だよね。どっかずれてるよね。
「学生から高齢者まで働け」という一億総活躍(という名の一億総奴隷)を旗印に、こういうことが当たり前になってしまうことを私は危惧している。
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