盆休み真っ盛りである。例年のごとく、「お盆休みを故郷や行楽地で過ごす人たちの帰省ラッシュが今日ピークを迎え…」といったお決まりのニュースが報じられた。数日後には、「過ごす」が「過ごした」と過去形になり、「帰省ラッシュ」が「Uターンラッシュ」に変わる。短くて、みんな一緒に休むという日本の夏休みの特徴だ。
みんな一緒でないと夏休みが取れない日本
日本では、GW、盆と年末年始のそれぞれ1週間程度が大きな休みだ。その休み間には、民族大移動といえるほど、多くの人が同時に帰省や旅行をするため、交通機関はどこもかしこも非常に混雑する。50キロ以上の大渋滞した高速道路、乗車率200%の新幹線、軒並み満席の航空機は、この期間の風物詩だ。
海外旅行にしても、著名な観光地はどこも日本人だらけで、日本語ばかりが聞こえきて、旅行気分が半減ということもあるだろう。しかも、仕事のスケジュール並にびっしり詰まった旅程で、息つく暇もなく、観光地から観光地へ足早に移動する。同じホテルに連泊が珍しくない外国人旅行者と比べて、何ともせわしない。
日本にある多くの会社の夏休み(盆休み)は、8月13〜15日の盆を挟んで1週間程度が普通である。しかし、夏の季節は3ヵ月もある。子供の夏休みに合わせるにしても、7月下旬から8月末まで1ヵ月半もある。盆という限られた期間を、みんな同時に休む必要がどこにあるのだろうか?
日本と違い、南欧では1ヵ月を超える長い夏休みは当たり前である。フランスでは最長2ヵ月もの夏休みが取れる。アメリカやイギリスなどのアングロサクソン系の国では、そこまでの長期休暇は取れないが、それでも日本のように同時期に一斉に夏休みを取るなんてありえない。
なぜ日本では海外のように自由なタイミングで夏休みが取れないのか?
この質問に「しょうがないだろ。ここは日本だ」と思考停止することは簡単だ。その前に、各人に考えてほしいと思う。
- なぜ海外のように長い夏休みが好きなタイミングで取れないのか?
- 長い夏休みを取ることでどのような利点があるのか?
- 長い夏休みを一般的にするにはどうすればいいのか?
理屈の上では、正規・非正規を問わず、日本でも3週間程度の長期休暇は取ることができる。労働基準法では、有給休暇は勤務開始6ヵ月後から与えられる。勤続年数によって増えていき、最高は20日である。仮に有給を10日連続で使うとすると、2週間は休みとなる。盆正月休みと合わせれば、3週間の休みを取ることは可能である。しかし、今の日本では、残念ながら机上の空論に過ぎない。そんな休暇の使い方をすれば、休暇から戻ってくると、席がなくなっているだろう。
労基法上では長期休暇は取れるが、現実はかなり難しい。私は、大きく以下の3点にあると考えている。1番目と2番目の要素が大きな要因を占めるのではないだろうか。以前書いたエントリー「休むこと=悪と見なす日本社会がみんなを不幸にする」を参考にしてもらいたい。
- 日本人に織り込まれた休むことへの罪悪感
- 各人の職域が明確な「個人プレー」ではなく、「チームプレー」という働き方
- 病欠有給(Sick Leave)がないので、もしもの時のために有給を使わないでいる人が多い
休むことは充電でもある
海外では、休暇というのものは、身体と精神の充電するための貴重な時間でもあると考えられている。都会の喧噪から離れ、友人や家族と水入らずの時間を過ごすことで、心身ともにリフレッシュすることができ、それが結果として生産性やモチベーションの向上に繋がる。
大混雑した交通機関で旅行や帰省をして、わずか数日後には再び大混雑した交通機関でUターン、そして翌日から息つく暇もなく仕事、という今の日本人の休み方では、本当に休養しているとは私にはとても思えない。
1ヵ月の夏休みは無理でも、2〜3週間程度のまとまった夏休みを、比較的自由なタイミングで取ることができれば、どれだけ良いだろうか?休みが分散することで交通機関や行楽地の混雑も緩和される。旅先で同じホテルに連泊してのんびり観光できる。旅先から帰った後も、自宅や、地元の行楽地や日帰り温泉でのんびり過ごすことで、休み明けの仕事に向けて精気を養うことができる。
「山の日」制定より有休が普通に取れる社会
2016年から、8月11日が「山の日」として祝日になる。日本は、有給休暇の消化率とは裏腹に祝日が非常に多い。ところが、そんな祝日が1日増えるだけで、経営者側から「業務に影響が出る」「割増賃金が増える」と批判的になる声があった。有休消化すら満足にできないのに、どの口が言っているのだか。
お上主導で祝日だらけ 効率の悪い日本の“休み方” WEDGE Infinity(ウェッジ)
民主党政権が過去に大型連休を地域ごとに分散する案を出したとき、国民の反応は芳しくなかった。
みんなが同時に休みことで、交通網も行楽地もテーマパークも大混雑。割引きもほとんどない。病気になっても、開業医はどこも休み。—これが果たして正常な状態なのだろうか?学生でなければ、長い夏休みを取ってはいけないのだろうか?リタイアするまで我慢しなければいけないのだろうか?
いや、そんなことはない。私たちが働き方や考え方を見直せば、「ゆとりがある休み」は必ず実現するはず。
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