消費税増税に伴い廃止される自動車取得税の代替財源を確保するため、総務省は軽自動車税の増税に向け検討に入った。
業界やきもき 軽自動車増税 好調販売に水差す懸念 (2013/11/10 産経新聞)
地方ではクルマは贅沢品ではなく生活必需品
自動車税の増税と聞けば、「クルマは贅沢品だから仕方ない」と考える人もいるだろう。しかし、「クルマ=贅沢品」という図式が成り立っているのは、大都会だけだ。地方では、クルマは都会における電車と同じで、単なる移動手段であり、生活必需品である。
東京や大阪などの大都会であれば、クルマがなくても生活に支障はない。公共交通機関が非常に発達しているからだ。逆に、大都会でクルマを保有するとなれば、自動車税・自動車重量税・車検代・任意保険代・駐車場代・ガソリン代や高速代といった非常に高い維持費がかかる。都区内ともなれば、月極駐車場だけで3〜6万円する。これは、東京地下鉄の全線定期券の倍の価格である。電車であれば10分で行けるところを、車だったら1時間はかかるというのも珍しくない。
他方、地方都市ではクルマがないと生活すらままならない。公共交通機関は極めて貧弱だからである。電車(非電化の列車を含む)やバスは2時間に1本というところさえある。車であれば10分で行けるところを、電車だったら1時間はかかるというのも珍しくない。
街作りもクルマがあることを前提になっていて、どこの店にも無料の駐車場がある。コンビニやマクドナルドにも、店舗面積の3倍以上の駐車場を備えている。大型スーパーともなれば、数千台収容の大駐車場がある。
狭い日本の道路に合わせて作られたのが軽自動車
日本の道路は非常に幅が狭い。両側4車線以上あるのが適切な区間でも2車線しかなかったり、歩道すらなかったり、右折レーンもなかったり、バス停の乗降用停車スペースがなかったりする。自転車1台が道ばたを走っているだけで渋滞、右折車1台で渋滞、乗降停車中のバス1台で渋滞なんて日常茶飯事である。渋滞を嫌った車が、住宅街の路地を抜け道に使うようになるのもある。先進国では、日本ならではの光景だ。
欧米では、住宅街の路地でも両側に歩道が整備され、車と歩行者が分離されている。日本の都市と欧米の都市を、Googleのストリートビューで見比べれば一目瞭然である。
日本の道が狭い理由は、馬車交通の時代がなかったこと、道路網より鉄道網の整備に力を入れたことや、国土の4分の3が山地ゆえ道幅を広げる余裕が少ないことが挙げられる。これについて今更どうこう言ったところで何も始まらない。日本の道路を全面的に改良しようなんて、一朝一夕にできるわけがない。日本の狭い道にあった小型で小回りがきく車を開発する方がはるかに現実的だ。そんな日本の道路事情に合うように、国民車構想が元となって開発されたのが軽自動車である。
普通車同士であればすれ違いができない狭い場所でも、軽自動車同士であればできる場合がある。
役人は「軽自動車の性能がよくなり、普通車と変わらなくなった」を増税根拠に挙げている。しかし、限られた軽自動車規格の中で、自動車メーカーがどれだけ企業努力を重ねてきたのか、役人は分かっているのだろうか?
普軽自動車が好調だから増税するいかにも役人的な発想
軽自動車と普通車の自動車税に開きがありすぎるというのなら、欧米の3倍とも言われる普通車の税金を安くすべきではないか。
660ccを超える普通車であっても、CO2排出量の少ない小型車であれば、軽自動車並の税金にする。燃費が悪い大型車は現行より高くする。全国津々浦々同じ税額ではなく、公共交通機関の充実度によって、地域別に差異をつけるのもありであろう。
なぜ、役人はこういった合理的な考え方ができなのだろうか?
今回の増税提案に対して、軽自動車の増税に反発するメーカーや利用者とは裏腹に、地方の役人は歓迎しているという。欧米の数倍とも言われているクルマにかかる諸税を、お前たち役人は何に使ってきたのか?地方の立派な農道か?クルマより狸が多い高速道路か?展示物がほこりをかぶっている立派な博物館か?
増税の前に、無駄なハコモノ行政を止めたり、民間に比べて高い地方公務員の給与を削減するという考えは役人にはないのだろうか?
日本の軽自動車の利用者はもっと怒るべきではないか。
- 作者: 桂木洋二,GP企画センター
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