かつて「日本人レール」というものが存在した。そのレールの上を走る「普通」列車に乗れば、誰もがごく「普通」の人生を送ることができた。あえて途中下車をして、別の列車に乗り換えない限り—。
『Always 三丁目の夕日』の頃の昭和時代
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『Always 三丁目の夕日』という映画がある。安倍首相のお気に入りだそうだ。「古き良き昭和時代を見事に再現した名作」との呼び声が高い。他方、当時を知る者からすれば、極端に美化されているという反応もある。映画の内容についてはレビューサイトに譲る。確実に言えることは、この映画の時代背景である昭和時代後半は、「日本人レール」が存在し、その上を走る「普通」列車は、極めて順調だったしていたということだ。
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上の本にも、就職と結婚だけは、誰もができたと書かれている。
新卒採用・年功序列がよく機能した時代
高度経済成長期は、圧倒的に売り手市場であり、学校卒業者は「金の卵」と呼ばれ、非常に重宝がられた。バブル期ともなれば、企業が内定者にクルマを買い与えたり、海外旅行に連れて行ったりと至れり尽くせりだった。まさに猫の手も借りたいほどの売り手市場であった。*1
高度成長期ゆえに、会社はどんどん大きくなる。会社が大きくなれば、新しい部署ができたり、子会社ができたりする。その分、ポストは増えていき、そのポストは年長者にあてがわれた。年齢が高くなれば、ほぼ自動的に昇進・昇級できた。
その弊害として、天下りが生まれたり、労働市場が硬直化したりした。しかし、みんな同じであることを好む日本人の性格も相まって、新卒採用・年功序列は非常に良く機能していたと言えよう。
誰もが結婚できた時代
今では、3人に1人が生涯未婚と言われているが、当時は考えられなかった。婚姻率は約98%であり、ほとんどすべての人が結婚できたのだ。なかなか異性に縁がない人でも、結婚適齢期を迎えて独身ならば、親・親戚・上司や近所の世話好きなおばさんが縁談を持ってきた。長い沈黙の末に「あのう、ご趣味は」で始まるお見合いシーンは、誰もが一度はテレビで見たことがあるだろう。
結婚するのが当たり前だった当時からすれば、結婚しない人は変わり者扱いされていた。
バブル崩壊とともに日本人レールも崩壊した
宴にはいつか終わりが来る。その終わりこそが1991年のバブル崩壊である。以降、日本は就職氷河期を迎え、失われた10年へと突入していき、今なお続いているのは知っての通りだ。
経済成長が頭打ちとなれば、会社の成長もストップする。すべての社員に高いポストが用意できるわけがない。年功序列が機能しなくなるどころか、正社員の採用すら手控えるようになる。さらに新興国との競争が激しくなれば、企業は生き残りをかけてコストを削減しなければならない。解雇規制が強い日本では、そのしわ寄せは、正社員採用の抑制に来る。不安定で低賃金な非正規雇用が増えれば、結婚も遠ざかる。それに合わせるかのように、1990年以降から未婚率が急上昇している。
親世代の言う「普通」はもはや普通ではなくなった
私のブログ読者の世代は20〜30代の若年層が多いことと思う。おそらく、あなたの親の世代は、若い時代は高度成長期のまっただ中だったのではないだろうか。
就職や結婚をすることが、水や空気のように当たり前であった時代を知る者からすれば、現在の就職難は実感に乏しい。そのため、フリーターやニートの問題を説明しても、「それは本人の甘えだ」と言って、なかなか理解してもらえない。日本人レールが存在していた頃の固定観念から抜け出せずに、今日においても
男には「しっかり勉強して、良い大学に入り、一流企業に就職するんだぞ」
女には「結婚するのなら、公務員や一流企業に勤めている安定した人となさい」
と言っている人が親世代が多いのが現状であろう。だが、それは過去のことだ。繁栄を極めていた頃のやり方や考え方のことを「普通」と呼んで、いつまでもこだわるのはやめる時ではないだろうか。
レールが存在しなくなった現在、親世代の常識は通用しない。旧来の価値観を変えない限り、あなたが安定した職について、結婚して家庭を築くことは極めて困難だ。そのことは、昨今の婚活ブームや、労働者の3人に1人が非正規雇用であることが物語っている。
レールが途切れても、人生という旅は終わらない。レールがなければ、列車も走れない。旅を続けるには、自分の行きたい方向に、自分の足で一歩ずつ進むしかない。
私は「海外脱出」という方向に人生の舵を切った。あなたは?
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