前回のエントリーでは、日本の形式的な手書きが主流の履歴書のおかしさについて、日本の企業を揶揄ぎみに書いた。このエントリーでは建設的な提案をしてみたい。
古いやり方にこだわる日本企業
新聞の求人広告欄や折り込み求人チラシには、相変わらず「電話連絡の上、履歴書持参」「履歴書を当社まで郵送」「要写真貼付」と書いてある。
中にはネット応募できるサイトもあり、職歴やスキルをフォームから送ることができる。しかしながら、企業からのメールや電話では「面接時に写真貼付の履歴書を持ってきて欲しい」と言われるケースが少なくない。二度手間ではないか。企業によっては、面接前にその企業独自のエントリーシートに記入を求められる。ここまでくれば三度手間だ。あきれて物が言えない。
それが慣習だというのなら仕方なく従うが、一言だけ言わせてくれ。
「非効率なだけだろ。紙の履歴書1枚仕上げるのに1時間以上はかけてるんだぞ。仮に100社に応募して、全社不採用になった場合計100時間もの時間を無駄に使ったわけだ。その100時間を語学なり職業訓練なりに充てたら、どれだけ有意義だと思ってるんだ?」
いい加減、IT時代に相応しい合理的なやり方に変えていこう。
IT時代の求人方法とは?
求職者は、前もってハローワークや求人広告会社の運営する求人情報サイトに、連絡先、学歴、職歴、自己PRとスキルを登録しておく。PCからでも携帯電話からでも、ネット通販と同じようにフォーム入力するだけで登録できるようにしておく。
企業は、紙の求人広告にはQRコードとURLを記載しておく。求人広告には、スペースに限りがある。当然、書き切れないこともあるだろう。書き切れないことはネットに記載すればよい。
求人広告を見て、その内容に興味を持った求職者は、携帯電話やPCで求人情報サイトの個別ページにアクセスして、詳細を確認する。そのままログインすれば、登録時の情報が呼び出され、ワンクリックで応募できるようにする。応募企業へのメッセージを個別に記入できるようにしておき、志望動機はそこに入力すればよい。
応募すると同時に、企業の採用担当者宛に、フォーム内容から自動的に作成された履歴書がメールが届くようにする。求人企業がITにそれほど精通していなければ、FAXで届けるオプションも付けるとよい。
求職者には、あらかじめ登録しておいた希望職種や希望勤務先と一致する企業が、求人情報を出した時点で自動的にメールで通知するというのもありだろう。
応募後の流れはこうしよう
先ほど挙げた方法は、まだ不完全とは言え、すでに実現している。問題は応募後のステップである。
求人情報サイト運営会社は、求人しようとする企業と、契約時に「顔写真・年齢・性別を求めない」「紙の履歴書は要求しない」「書類選考は3日以内に行う」「採否の連絡方法を明確にする」といった取り決めをしておけばよいだろう。
企業は応募があった時点で、書類選考を行う。書類選考を通過した者に対して、電話面接を行う。この電話面接で、履歴書や求人情報では分からない点を、お互いに煮詰めていく。電話面接で双方が納得した上で、対面面接や適性検査へと進んでいく。
このようにすれば、完全にペーパーレス化できる。従来の紙の履歴書を挟み込む余地はまったくない。求職者はネットに接続できる環境が必要だが、働いている世代であればネット接続可能な携帯は間違いなく持っているであろう。WEBページのフォームに入力していく形式にすれば、PCが使えなくても問題ない。PCが使える人向けには、オリジナルの履歴書をPDF変換して、メール送信してもらうというのもありだ。
この方法は、双方にメリットがある。応募者にとっては、履歴書を書く時間と写真を撮る費用を節約できる。企業にとっては、電話応対したり、ミスマッチかもしれない応募者と面接をする時間を節約できる。「時は金なり」だ。
日本企業よ、目を醒ませ
ここで取り上げた方法は、海外では普通に実現していることだ。特段高度な技術を使っているわけでもない。日本企業が「履歴書は手書きで写真貼付が当然」という呪縛から解き放たれれば、明日からでも実現できる。
「履歴書が手書きで、きれいな顔写真を使っている人ほど職業能力が高い」というなら、それを証明する客観的データなり論文なりを見せてもらいたい。
「よその企業がやっていない」なら、あなたの企業が先陣を切ればよいではないか。「手書きの履歴書は日本の慣例だから」と言い張るならそれも結構。だが、悪しき慣習に束縛された横並び体質では、グローバリゼーションの中で淘汰されていくだけだ。