だから僕は海外に出る、さあ君も

「日本って何か変だなぁ」という疑問を胸に、思い切って海外脱出した著者が、海外からの視点で日本の社会問題や海外脱出アドバイスを綴るブログ。日本の奴隷的な長時間労働にうんざりしている人、ナショナリズム台頭・人口減・財政難の日本の行く末を危惧している人、協調性という名の同調圧力に耐えられない人、とにかく自分の殻を破ろうと思っている人、そんなあなたに『海外に出ること』を選択肢の1つとして提案する。

だから僕は海外に出る、さあ君も - ニートのガラパゴス日本脱出日記

ガラパゴス化している日本の奴隷的な労働環境と保守的な社会構造に適応できずに海外脱出したニートが海外視点で綴るブログ

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女性専用車両ではなく混雑緩和こそが痴漢対策

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前々回の記事では、最近話題になっている「女性専用車両」の問題点を取り上げ、男性にとっても女性にとっても差別に当たり、痴漢対策としても何ら意味がないという趣旨の記事を書いた。前々回の記事では、割愛した部分や書き足りない部分があったので、今回はその部分について書こうと思う。

この記事を書いているさなか、女性専用車両に反対するグループ「差別ネットワーク」が渋谷駅前で街頭演説をし、彼らに反対するグループがカウンター行動をするという事件があった*1。また、テレ朝が反対派グループの男性を取材し、テレビ放送されたことで、Twitterでも一時トレンドになり、今でも賛否両論が繰り広げられている。

カウンター団体は、レイシズムに反対するグループという指摘がある。人種差別に反対する人が、性差別に反対するグループを批判しているところをみると、彼らは「差別」の定義を理解していないように思えてくる。

反対派の人たちは以前からちょくちょくと「任意確認乗車」と称して女性専用車両に乗り込んだり、女性専用車両に反対する街頭演説を行ってたりしているようだ。女性客とトラブルになって電車を止めてしまうことも何度かあったが、今回はたまたま朝日新聞が「遅延の原因」として記事にした*2ことで一気に広がった感じだ。

ラッシュアワー

痴漢は日本の恥部

混雑した通勤電車内で痴漢が多く、痴漢によって苦しめられている女性が少なくないことは、紛れもない事実である。そして、痴漢は女性の尊厳を踏みにじる卑劣な性犯罪であると同時に、公共交通機関における痴漢は、無関係な男性に濡れ衣を着せるリスクをもはらむ。

女性客にとっては、自分の夫や父や息子が痴漢冤罪に巻き込まれることで、家庭崩壊に繋がる。男性客にとっては、自身が冤罪に巻き込まれるリスクがあることはもちろん、自分の妻や娘が、性犯罪の被害者になることもある。

国にとっては、痴漢が"chikan"として世界語になり、国際社会において性犯罪大国とのレッテルを貼られることは、日本を訪れたり、日本で働こうとしたりしている外国人の二の足を踏ませることになる。

痴漢は一般市民にとっても、国にとっても、深刻な社会問題である。早急な対策が必要なのは言うまでもない。

ただ、痴漢加害者の大半が男性であることを鑑みても、女性専用車両は痴漢問題の解決策ではない。女性専用車両が導入されて15年以上経つが、一向に問題の解決はしていない。むしろ、男女間の対立を煽ったり、問題の本質を覆い隠したりしているだけだ。痴漢対策として、女性専用車両(=基本的に女性しか乗れない車両)を作ればよいというのは、あまりにもお粗末すぎる。

痴漢対策は混雑率の緩和しかない

電車内での痴漢の発生時間帯が朝ラッシュ時*3であることからも、電車内の痴漢の多くは、身動き取れないほどのすし詰め状態の中で行われる。では、混雑率の緩和こそが最大の痴漢対策になるだろう。

実際、特に東京圏の通勤電車の混雑は常軌を逸している。

英語版Wikipediaの山手線の記事(2016年)によると、

  • ロンドン地下鉄は、11路線270駅で、1日の利用者数は336万人。
  • ニューヨーク地下鉄は、26路線482駅で、1日の利用者数は508万人。
  • 東京は、山手線1路線29駅だけで、1日の利用者数は368万人。

である。

つまり、東京は山手線1路線だけでロンドンの地下鉄全路線に匹敵する利用者がいる。もちろん、東京を走っているのは山手線だけでなく、山手線の内側を中心に多数の地下鉄が網の目のように張り巡らされ、池袋・新宿・渋谷などのターミナルには他の路線が乗り入れている。さらに10両編成といった比較的長い電車がひっきりなしに発着している。それにもかかわらず、あの混雑なのだから、東京の鉄道混雑水準が、欧米先進国の大都市のそれからかけ離れているかは想像に難くない。

「9時だョ!全員集合」を今度こそ見直すとき

混雑を緩和するには、編成両数を増やすか、線路を増やすか、あるいは、新路線を作るかしかない。東京の人口は増え続けているが、2025年をピークに減少に転じると予想されている。将来的な人口減少を見越せば、鉄道事業者は設備投資には及び腰にならざるを得ない。

輸送力増強に頼らずに鉄道の混雑を緩和するにはどうすればいいだろうか?

  • 東京一極集中の是正
  • フレックスタイム
  • 在宅勤務
  • 時差通勤

あたりだろう。

多くの会社や学校は午前9時までに始まる。そのため、必然的に午前7時〜8時代の電車が混雑する。

ITがこれほど発達しているにもかかわらず、なぜ9時始業にこだわるのだろうか? 9時に全員が顔を合わせる必要がどこにあるのだろうか? サービス業など職によっては9時に全員がそろっていなければ仕事が始められないというケースもあるだろう。しかし、ホワイトカラーの仕事であれば、始業・終業時間の融通は利かせることができるはずである。また、学校においても、授業の一部をオンライン化して自宅で受けられるようにできるだろう。実際、ネットを使った通信制の高校や大学はあるのだから。

私が生まれる前に「8時だョ!全員集合」というバラエティー番組があったが、日本は「9時だョ!全員集合」と言わんばかりの前世紀的な働き方をいい加減に終わらせるときではないかと思う。

鉄道事業者は実効性のある痴漢対策を

鉄道事業者も、「他社局もやっている」「(消費者としての)女性を優遇する=女性に優しい会社=世間受けがいい」といった理由で女性専用車両を設定するのではなく、実効性のある痴漢対策(混雑緩和策)を本気で取り組んでもらいたい。例えば、車内防犯カメラの設置、制服警官の配置、定期券やICカードの時間帯別運賃の導入などだ。

※ 防犯カメラ設置や制服警官配置で犯行の一部始終をとらえることは難しいが、抑止効果はある。

百歩譲って、「女性専用車両が痴漢対策に効果的であり、今後も続ける」と主張するなら、女性専用車両導入で痴漢がどれだけ減ったのか、他の車両の混雑率はどうなったのかなどの説得力のあるデータを出すと同時に、男女平等との整合性や任意性の担保について自社の考えを明らかにすべきではないか。残念なことに、「女性専用車両に反対する会」のサイトを見る限り、鉄道事業者は、そういった指摘には曖昧な対応に終始しているようだ。

それにしても、女性専用車両問題とその背後には、日本が抱える非常に多くの問題が凝縮されているように思う。

性差別、東京一極集中、9時始業という画一的な働き方、冤罪リスクと「人質司法」と呼ばれる司法の後進性、消費者としての女性は優遇する一方で労働者としての女性は冷遇する社会、性犯罪に対する認識の低さ、差別に対する理解不足、論理ではなく感情論で良し悪しを判断する世間……etc。

解決への道のりは遠そうだが、私たち日本人が問題を問題として認識し、解決へと向けて考え、行動に移す必要がある。

女性専用車両の社会学

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©2018 だから僕は海外に出る、さあ君も by 佐野由自