共和党のドナルド・トランプ氏がアメリカ合衆国第45代大統領に就任して、早くも10日が過ぎた。女性蔑視、マイノリティー排除、差別主義、移民・難民排斥、保護主義など、選挙期間中から過激な発言を繰り返していたトランプ大統領は、就任後は次々と過激な公約を実行に移し、アメリカ国内外から非難の声が上がっている。日本においても、トランプ大統領の政策を懸念する人が非常に多い。
世界中から批判の矛先が向けらているトランプ大統領だが、日本はどうなのだろうか?
こんなにひどい自民党と安倍政権
残念ながら、トランプ大統領を強く批判できるほど、日本は自由や人権が尊重されている一流先進国とは言えない。
「日本ひどすぎ」と思う部分のうち、トランプ大統領の言動と似通っている部分をピックアップしてみよう。
- 政府を批判する真っ当なデモと悪質なヘイトスピーチを同一視*1。
- 昨年(2016年)春、政府に批判的なニュースキャスター3人がほぼ同時降板*2*3*4。報道の自由度ランキングは、民主党政権時代の11位(2010年)から年々下がって2016年は72位*5。
- 安倍首相に近い自民党の若手議員が「経団連に働きかけてマスコミを懲らしめよう」と発言*6。
- 石原慎太郎前都知事は、「有害なのはババア」*7「三国人」「犯罪を犯す民族的DNA」*8など女性差別・人種差別発言を繰り返しながら4回も当選。
- 厚生労働大臣(当時)が、自民党県議の集会で「女性は産む機械」と発言*9。
- 選択制夫婦別姓は未だに認められていない。(国連の女性差別撤廃委が勧告*10)
- 女性管理職の割合は低く*11*12、賃金格差も大きい*13。(女性が輝く???)
- 軽微な事件であっても、警察が被疑者を拷問して自白を得ようとするため、冤罪が後を絶たない。(国連の拷問禁止委が勧告*14)
- NHKの籾井勝人前会長が就任会見で「政府が〝右〟というものを〝左〟とは言うわけにはいかない」と発言*15*16。
- 5000人の難民申請に対して、認められたのはわずか11人。*17 (2015年は7586人の難民申請に対して、27人認定*18) 劣悪な入管の施設に長期間収容されている人も少なくない*19*20。
枚挙に暇がない。これが日本である。安倍首相は、トランプ大統領の入国禁止令についてのコメントを差し控えたが、仮にトランプ大統領を批判したら、世界中から「お前が言うな」と冷ややかな視線を浴びせられただろう。
さらに、民主主義という側面では、日本はアメリカよりも遙かに劣っている。
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堅牢な民主国家・アメリカ、脆弱な民主国家・日本
アメリカの民主主義は非常に堅牢であり、三権分立がよく機能している。「第四の権力」と呼ばれるマスコミの権力監視も非常に強い。大統領令は確かに強力だが、議会は対抗法案を出したり、連邦裁判所が差し止めたりして、大統領の暴走を歯止めをかけることができる。早速、連邦裁判所は、イスラム教国の国民の入国を禁止する大統領令を一部無効にする判断を下した。さらに、今後、議会の対立が深まれば、弾劾されることもあり得る。(海外メディアでは、トランプ大統領の弾劾を予想する記事*21もある)
トランプ大統領が自身の人気番組で言い放つ"You're fired"(お前はクビだ)がアメリカで流行語になったこともあるが、国民からクビを宣告される日もそう遠くないかもしれないのだ。
他方、日本はどうか。日本の民主主義はトタン屋根のように脆い。ちょっとした弾みで簡単に崩れ落ちる。三権分立どころか「三権癒着」だ。メディアの権力監視も極めて弱い。お上が「右と言ったら右」なのが日本なのである。
暴走列車に例えれば、ブレーキが付いているのがアメリカ、ブレーキが壊れているのが日本だ。前者は止める術があるが、後者は脱線転覆するまで止められない。(ここでいう「ブレーキ」とは、権力を縛る憲法であり、権力を見張るメディアであり、主権者たる私たち国民である)
日本の最高裁に期待するのは間違いということだけは言っておく。一昨年(2015年)に可決成立した安保法制は、憲法学者の大半が違憲であると指摘している。違憲訴訟が行われているが、最高裁は、統治行為論を理由に憲法判断を避ける可能性が高い。法令審査権を持つ最高裁判所は「憲法の番人」と言われているが、実際は「権力の番犬」である。
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安倍首相は「法の支配」「民主主義」云々 と利いた風なことを言っているが、最高法規である憲法を無視して何が「法の支配」なのだろうか。国民の声を無視し、不都合なメディアを弾圧して何が「民主主義」なのだろうか。こんな口先だけの狡猾な人間が私たちの首相だなんて、世界の恥、いや、世界にとっての危機以外の何物でもない。ティアマト彗星でも落ちて消滅して、来来来世ぐらいに生まれ変わってくれないかなと思う。
♪でんでん無視無視 憲法無視 お前の真意はどこにある〜
トランプの振り見て日本の振り直せ
「人の振り見て我が振り直せ」ということわざがある。トランプ大統領の言動や政策を見て「ひどい」と思うなら、私たちの国である日本の政治(特に安倍政権)についても、見直してみるべきだ。安倍首相には、トランプ大統領のような過激さこそ見られない。しかし、その根底にあるどす黒いものは、トランプ大統領のそれと共通する。安倍晋三は、マイルドヤンキーならぬマイルドトランプといったところだろう。
♪カントリーロード どこまでも 嘘をつき 民だまし〜
もし、安倍首相とトランプ大統領が、夢の中で身体が入れ替わったとしても、(言葉や前提知識を抜きにして)することは大して変わらないだろう。それどころか、蜜月になりそう。来月10日の首脳会談で、手を繋ぎながら歩き、熱いキスでもしたらいい。品がない極右のネトウヨ首脳同士で気が合うだろうから*22。
◇
オバマ前大統領の退任演説より。
我々一人ひとりが、民主主義を「懸念する、嫉妬深い番人」たるべきであり、このすばらしい祖国をよりよいものにしようと常に務めるという、喜びに満ちた使命を担うべきです。我々の外見はすべて異なりますが、「市民」という誇らかな肩書を共有しています。
究極的には、これが、我々の民主主義が要求することなのです。民主主義は、あなたを必要としているのです。それは、選挙がある時のみではありません。あなたの権利が侵害された時のみでもありません。あなたの生涯においてです。
もし、あなたが、インターネットで見知らぬ他人と議論することに疲れたなら、実際の生活で、他者と会話してみてください。…(略)…
他人がなにかよいことをやってくれるだろうと期待するのには、リスクが伴い、プロセスにがっかりすることがあるかもしれません。
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*1:自民党、国会デモの規制を検討「仕事にならない」 ヘイトスピーチPTが議論
*2:安倍首相、メディアに口封じ? 政権批判のキャスター3人が同時降板 | 中央日報
*3:政権圧力はあったのか? 古舘伊知郎ら降板キャスター「最後の発言」 - まぐまぐニュース!
*4:Japanese TV anchors lose their jobs amid claims of political pressure | World news | The Guardian
*5:報道の自由度、日本は72位 国際NGO「問題がある」:朝日新聞デジタル
*6:大西英男議員「報道機関を懲らしめる」またやった 再び問題発言
*7:2002年石原都知事の「ババア発言」を女性131人が提訴:日経ウーマンオンライン【働く女性の40年史】
*8:『産経新聞』2001年5月8日
*9:2007年柳澤厚生労働大臣「女性は産む機械」発言:日経ウーマンオンライン【働く女性の40年史】
*10:東京新聞:夫婦同姓など「差別的」 国連委、日本に改正勧告:政治(TOKYO Web)
*11:企業の女性管理職比率、6.6% 政府目標遠く :日本経済新聞
*12:【女性管理職ランキング】日本は中国以下の96位 フィリピンはトップ10入り
*13:男女間の給料格差、日本は世界でワースト3位にランクイン - まぐまぐニュース!
*14:国連拷問禁止委員会が日本に勧告 | ヒューライツ大阪
*15:賠償提訴:「NHK経営委が会長罷免しない…放送法違反」 - 毎日新聞
*16:東京新聞:NHK会長 権力との距離を保って:社説・コラム(TOKYO Web)
*17:「お金は出すが…」日本の少ない難民受け入れに海外から批判「責任を直視せよ」とも | NewSphere
*18:法務省:平成27年における難民認定者数等について (速報値)
*19:難民 日本難民 入管収容所の外国人の待遇 - YouTube
*20:働いたら収容所、帰国したら拷問〜〜謎のイラン人、ジャマルさんは難病で難民!! の巻(その2)‐雨宮処凛がゆく! | マガジン9
*21:Donald Trump ‘highly likely’ to face impeachment within first 18 months as US President, expert warns | The Independent