相変わらず英語ブームが続いている。猫も杓子もTOEICな今日だが、TOEICスコアは、サラリーマンと就活生が会社への忠誠心を示すための指標である。それ以上でもそれ以下でもない。
TOEICは国際標準ではなく日本だけのガラパゴス検定
「TOEICスコアが査定に響く」「英語関係のバイトをしたいけど日本だとTOEICが有利」といったように、自分に目に見えるメリットがない限り、受ける意味はない。受験料の無駄である。「TOEIC=デキるビジネスパーソン」とのいうイメージを演出して、英語業界が搾取しようとしているだけなので。
テレビゲームでスコアを競うかのように、TOEICスコアを追い求めているのは日本人だけである。TOEIC受験者の国自体は世界中に散らばっていても、日本だけが突出している。海外の会場でTOEICを受けたら、日本人と韓国人だらけだった*1という話もあるぐらい。
英語の試験の世界標準は、IELTS、TOEFL(米国)、ケンブリッジ英語検定(英国)だ。TOEFL(スコア制)は米国留学のためのテストなので、試験内容はアカデミックである。ケンブリッジ英検(級別合否制)は、リスニング発音も表現もイギリス英語である。IELTS(スコア制)は、アカデミック(留学用)とジェネラル(一般用)に分けられていて、アメリカ英語・イギリス英語も考慮されている。
※いずれも受験料が高め(約25,000円)なので、留学・移住などで必要がある人以外は、まずは英検(1級は8,400円・準1級は6,900円)を目指すといいだろう。試験回数が年3回と少ないのが難点だが。
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目標にするなら英検1級
英語の勉強は、大学入試のように「ここまでやったら終わり」という分かりやすい最終目標がない。だから、試験突破を当面の目標に据えるというのはありである。
自分の英語力を測る目標としては、TOEICではなく英検が向いている。もちろん目指すのは最上級の1級。「いきなり1級は…」って人は準1級からでもOK。
英検1級の過去問を見てみよう。
2015年度第2回(10月11日実施)の大問1の語彙問題から。
The politician’s remark that the war was nearly impossible to win ( ) his country’s troops. They began to wonder what they were fighting for.
1. demoralized / 2. implored / 3. detested / 4. immersed
主語が”remark”で、その”remark"を説明しているのがthat節、動詞(他動詞)の箇所が空欄、"his country’s troops"が目的語。選択肢は難しい単語が並んでいるが、意味がわかれば簡単。
※主語・修飾語・動詞・目的語は、直感ですぐに分かるようにしておこう。訓練あるのみ。上の英文だと、括弧に入るのが、「他動詞の過去形」とすぐ分かる程度まで。
日本語に訳してみると……。
その戦争に勝つ見込みがないというその政治家の発言は、兵士たち ( ) 。彼らは、何のために戦っているのだろうと思い始めたのだ。
1. の士気を低下させた / 2. を破壊した / 3. を忌み嫌った / 4. を熱中させた
答えはもちろん1。
よく「英検1級の語彙は日常生活と乖離しているほど難しい」なんて声があるが嘘である。論より証拠。選択肢の4つの単語を、ニューヨークタイムズで検索してみると、demoralisedは1万件、imploredは7,690件、detestedは3,860件、immersedは1万件ヒットする。(Googleで" site:nytimes.com"を付けて検索)
私たち日本人が、日本語の新聞の論説を読んで、辞書引きをしないと理解できないというケースは、カタカナ語や時事用語を除き、ほとんどない。それと一緒である。
◇
続いて、英検1級の小論文も見てみよう。なかなかの良問である。
「国際テロは解決しうるか?」
次のポイントのうち、3つをカバーしながら、200語前後で論ぜよ。(3段落以上で序説と結論を含むこと)
経済格差/教育/財政負担/歴史的背景/国際協力/軍事行動
質問文は全部英語だ。東大入試の社会科に似た問題があるが、定説を自分の言葉で述べるのではなく、与えられたトピックの是非について自分の意見を述べるのが違いである。ちなみに、英語の200語は、日本語の約600文字に相当する。
綴りや文法の間違いがないことはもちろんのこと、論理的な文章を書く力が求められる。ネットでよく見かける感情むき出しの稚拙な文章では点はもらえない。
英検は、2次試験(1次合格者のみ)まである。2次試験は面接。
TOEICでハイスコア=英語ペラペラ?
TOEICハイスコアの人は英語がペラペラかと思われがちですが、案外大したことないんです。
理由は簡単。「数学で公式を丸暗記していて、計算問題にだけは強いけど、応用問題には弱い」っていうケースと同じだから。
TOEICは、試験時間2時間で200問と問題数が膨大であり、次から次へとテキパキとこなしていくことが求めらる。出題される内容は広告・メールのやり取り・アナウンス・電話対応と多岐にわたる。しかし、やや長めの文章を読解したり、自分の意見を論理的に述べたりする問題は一切ない。
例えると、TOEICは高校数学の基本計算問題100問、英検1級は大学入試2次試験のようなもの。高校数学を忘れてしまっている人から見れば、limやΣや∫を含む計算問題を次から次へと解いている人は、その計算問題が基本的なものであっても、すごい人に見えるのでしょうけど。
TOEICの勉強は英語の勉強にあらず
TOEICのための勉強はやめて、普通に英語の勉強をしましょう。英語力の目安としての英語の試験を受けるなら英検がいいです。(TOEICを受けるなら、本番試験前に公式問題集で模擬試験をして、慣れるだけで十分)
TOEICでハイスコアを目指すより、
- NHKニュースやディズニーアニメの音声を英語にして理解できる
- タイムズ紙やワシントンポストなどの英字記事をスラスラ読める
- iPhoneに住んでいるSiriを口説ける
ようになる方が、はるかにあなたの英語力向上に貢献しますよ。
まだTOEICで消耗してるの?
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