ポータルサイトの鉄道運行情報を見ると、ほぼ毎日どこかの路線が人身事故で止まっている。日本の鉄道の止まる原因の第一位は人身事故、それも故意の飛び込み自殺である。
日本の電車遅延原因第一位は自殺
飛び込み自殺以外の自殺では、報道されることはほとんどない。しかし、飛び込み自殺の場合、電車が人身事故で止まっているという事実を駅の掲示板や新聞の三面記事で見聞きすることで、自殺があったということを否応なしに痛感させられる。「人身事故」という名の電車飛び込み自殺こそが、まさに日常生活で垣間見ることができる病んだ日本の姿を映し出す鏡ではないだろうか?
平日朝の殺気立った上り電車と平日夜のどんよりした下り電車
通勤電車にはある種の独特ともいえる空気が流れている。朝ラッシュ時は、乗客はみな異様に殺気立っている。乗客は口を「へ」の字に結び、無表情だ。都心に近づくにつれ、車内は足の踏み場もないほどぎゅうぎゅう詰めになる。帰宅時間が分散する下り電車は、朝ほど混雑しないが、時間が遅くなるにつれて、サラリーマンの顔もひとしお疲れて見える。
終電に近い深夜の下り電車の車内—多くのサラリーマンの目はうつろになっており、ある者は本を読み、ある者はスマホを触り、ある者は揺られながら眠りに落ちている。車内は終始無言で、小刻みな電車の走行音だけが聞こえる。残業が日常的な日本ならではの光景だ。海外ではこんな時間まで残業する人はほとんどいない。パブやナイトクラブに行ったりして帰途に就く人ばかりだ。
たかが「仕事」に人が殺される日本
電車が人身事故で止まった時の乗客の反応は、「またかよ」「会社に遅れる」「自殺するなら家でしろ」と言ったものだ。ダイヤが詰まっている時間帯であれば、駅間で一時間近くも車内で缶詰めにされるわけだ。まして、ただでさえ殺伐としているラッシュ時のすし詰めの電車であれば、不快度は極限になるのは想像に難くない。
連日連夜の激務に耐えかね、身体的にも精神的にも耐えられなくなった通勤途中のサラリーマンが、「このホームから、一歩踏み出せば楽になれるんだ」と吸い寄せられるように電車に飛び込む——飛び込みが月曜日や通勤時間帯に多いことを見ると、そんな姿が想像できる。人身事故を「いつものこと」で済ますのではなく、その要因の多くが日本の労働環境にあることを再認識すべきであろう。
自殺者の家族に追い打ちをかける鉄道会社の無慈悲な賠償請求
ひとたび人身事故を発生すると、それが故意の自殺であろうとなかろうと、金にまみれた貪欲な鉄道会社は、遺族に高額の損害賠償を容赦なく請求する。
賠償責任は事故を起こした当人に帰するが、当人が死ねば、遺産相続によって遺族に引き継がれる。遺族は、相続放棄という手段で回避できるが、中世で思考停止している保守原理主義の日本のクソ裁判所は、必要以上に監督義務という名の連帯責任を家族に求める。そして、多くの日本人がそれを支持する。彼らの思想は江戸時代の五人組と同じであり、一人の責任を家族に負わせる北朝鮮と何ら変わりがない。
※日本の司法は、民事も刑事も中世レベル。例えば、アメリカだと連邦最高裁は保守・リベラルが同数で、中道が1人だが、日本の地裁から最高裁まで保守の塊。リベラルな裁判官は左遷されることになる。*1
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もちろん、電車が止まった原因が、悪戯や過失であれば、相応の賠償を請求するのは当然といえよう。だが、多くの鉄道自殺者は、劣悪な労働環境で精神的に追い込まれて自殺した日本社会が生み出した犠牲者だ。追い打ちをかけるかように、鉄道会社が何の罪もない遺族に高額の賠償金を請求する。このような不条理がまかり通っているのが日本である。
最新の設備を誇る鉄道システムとは裏腹に、日本はまるで中世といえよう。
そんなことだから、人口が減って、立ち行かなくなるのだろう。魅力がない国に、人は寄りつかない。
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