だから僕は海外に出る、さあ君も

「日本って何か変だなぁ」という疑問を胸に、思い切って海外脱出した著者が、海外からの視点で日本の社会問題や海外脱出アドバイスを綴るブログ。日本の奴隷的な長時間労働にうんざりしている人、ナショナリズム台頭・人口減・財政難の日本の行く末を危惧している人、協調性という名の同調圧力に耐えられない人、とにかく自分の殻を破ろうと思っている人、そんなあなたに『海外に出ること』を選択肢の1つとして提案する。

だから僕は海外に出る、さあ君も - ニートのガラパゴス日本脱出日記

ガラパゴス化している日本の奴隷的な労働環境と保守的な社会構造に適応できずに海外脱出したニートが海外視点で綴るブログ

仕事なんかクソだろ? 就活やめて日本を出よう! 奴隷やめて海外に出よう! 語学を学び世界に出よう! 「仕事なんてクソだろ」が売り文句の「ニートの海外就職日記」に影響を受けた、あるニートのブログ

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「ヘイトスピーチ」の定義—国会周辺のデモはヘイトにあらず

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ヘイトスピーチ(ヘイトデモ)を規制する法案が持ち上がっている。

ちょうど1年前(2014年8月28日)、ヘイトスピーチを規制する法案を持ち上がった頃、ヘイトスピーチと併せて国会周辺のデモも規制しようという動きも自民党からあった*1。自民党は否定する談話*2を出したが、ヘイトスピーチと反原発・反安保法案等のデモの区別が付いていないのではないかと思わせる。

「ヘイトスピーチ」の定義

ヘイトスピーチ(hate speech)を日本語に直訳すると、「憎悪表現」となり、そのまま解釈すると「嫌いだと言うこと」である。これをそのまま受け止め、「反レイシズム団体がやっていることもヘイトスピーチですよね」と言う人がいる。しかし、それは間違っている。「レイシストは帰れ!」「さっさと辞めろ! 戦争屋!」とシュプレヒコールを上げることは、一般にヘイトスピーチの定義には当てはまらない

ヘイトスピーチ (hate speech)
憎悪に基づく言論。とりわけ人種・民族・宗教・セクシュアリティーなどに対する偏見や差別に基づくものをさす。
スーパー大辞林3.0©Sanseido Co.,Ltd. 2010

Hate speech - outside the law, is speech that attacks a person or group on the basis of attributes such as gender, ethnic origin, religion, race, disability, or sexual orientation.

Hate speech (From Wikipedia, the free encyclopedia)

ヘイトスピーチとは、偏見や先入観に基づいて、人種・国籍・出身・宗教・性的指向などに対して侮蔑する差別的表現のことをいう。

従って、「レイシストは帰れ!」「安倍晋三は辞めろ!」というのは、人種・出身などで差別しているわけではないので、罵倒・乱暴な言葉遣い・野次の類に当てはまることはあっても、ヘイトスピーチには当てはまらない

衆院の特別委員会で安保関連法案が可決され、本会議での採決を翌日に控えた15日。シュプレヒコールが国会周辺に響いた。倫理的に問題のある「ヘイトスピーチ」といって過言ではない。

産経新聞は、国会デモを「ヘイト」と呼んでいるが、ヘイトには当たらない。これを書いた記者は「ヘイトスピーチ」の意味を理解していないのだろうか?それとも、理解した上で反安保・反原発デモとヘイトデモを結びつけ、反安保・反原発デモに対して、国民に誤った固定観念を植え付けようとしているのだろうか?

ヘイトスピーチ 「愛国者」たちの憎悪と暴力 (文春新書)

ヘイトスピーチ 「愛国者」たちの憎悪と暴力 (文春新書)

ヘイトスピーチになる例・ならない例

偏見に基づいた差別的言動であれば、たとえ差別語や暴言を伴わなくても、ヘイトスピーチである

仮に、レイシズム団体が「大変恐縮でございますが、在日韓国・朝鮮人の皆様方におかれましては、どうぞ祖国にお帰りくださいませ」とやたら丁寧な言葉遣いでシュプレヒコールを上げたところで、それがヘイトスピーチであることに何ら変わらない。

逆に、中国・韓国への批判的なデモであっても、民族が対象ではなく、差別的言動でなければ、ヘイトスピーチではない

例えば、韓国の大統領が日本海の竹島に上陸したとしよう。それに対して、「竹島は日本の領土だ!」「国際司法裁判所に出てこい!」とシュプレヒコールを上げることは、批判の矛先はあくまでも韓国による竹島の不法占拠・不法上陸に対するものであるため、ヘイトスピーチには当てはまらない。もっとも、そのままコリアンタウンにまで足を運び、「在日は日本から出て行け!」「朝鮮人は死ね!」と言い放てば、それはヘイトスピーチである。

以下の写真を見てほしい。どちらも日の丸を掲げている。1枚目はデモだが、2枚目はヘイトスピーチ(ヘイトデモ)である。

▼反中国デモ (ヘイトスピーチではない)
反中国抗議デモ

▼反韓国デモ (ヘイトスピーチである)
反韓国ヘイトデモ

前者は、中国大使館前で行われ、抗議対象が「海洋進出をもくろみ、力による現状変更を推し進めようとする中国による一連の行為」である。この種のデモは、南沙諸島をめぐって中国と対立しているフィリピンでも行われている。*3

後者は、新大久保のコリアンタウンで行われ、攻撃対象が韓国・朝鮮人という民族全体に向けられている。在日特権や日本乗っ取りなどという荒唐無稽なネット情報を鵜呑みにしたか、あるいは単なるストレス解消のはけ口として、マイノリティ(日本の人口の0.4%)である在日韓国・朝鮮人を、悪意と偏見に満ちた暴言で罵っているだけである。正当化できる余地は微塵もない。国連が問題視するのも当然だ。*4

「中国・韓国でも日本へのヘイトスピーチをしているじゃないか」という声がある。それは、日本の歴史修正主義に対する抗議デモなのか、日本に対するヘイトスピーチなのかは分けて考える必要がある。「日本人を皆殺しにしろ!」「犬と日本人は出て行け!」といったものであれば、寸分違わずヘイトスピーチである。ただ、相手がしているからといって、自分たちも許されるということにはならない。理性的になることが求められる。

もっとも、ナショナリズムと排他主義は紙一重の差しかない。デモ隊が暴徒と化し、その矛先が相手国の企業や国民にまで向けられる*5こともしばしばある。このあたりは難しいところだ。

デモ参加で就職に不利になる?そんな企業はこっちから願い下げ

FacebookやTwitterなどのSNSで、デモに参加している写真があったり、そういった記事にいいねが付いていたりすると、それだけで就職に不利になるのではという指摘がある。

企業が応募者の情報をネットで検索するのは半ば常識となった。5年前のCNNの英文記事だが、

racist or homophobic comments will land your résumé and cover letter in the garbage.

(人種差別や同性愛差別のコメントは、あなたの履歴書と添え状をゴミ箱行きにするだろう)

とある。日本でも、採用担当者が応募者の情報を検索しているのはほぼ間違いないだろう。

デモ参加が有利不利のどちらに働くかは、応募者をふるいにかける担当者の見識にかかっている。自民党や産経新聞のように、正当なデモとヘイトスピーチの違いを理解していなかったり、左右を問わず政治的行為全般をよろしくないと考えている採用担当者に当たれば、マイナスとなるだろう。

私に言わせれば、そんな無知を人事担当者にしている企業なんて、こちらの方から願い下げだ。(そんな化石みたいな企業はないことを願うが……)

ヘイトスピーチの定義と併せて、ヘイトスピーチ(ヘイトデモ)と普通のデモは違うということを理解してもらえればと思う。

最後に、米ロサンゼルスを舞台に人種差別について描いた映画を紹介しよう。レンタルもできる作品なので、一度見てもらいたい。(私が海外に行って間もない頃、「お気に入りの作品よ」と見せてもらったものである)

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©2018 だから僕は海外に出る、さあ君も by 佐野由自