夢と目標は異なる。しかし、現実それらを区別できていない人が多いように感じる。子供染みた万能感を捨てきれず、自分を過大評価し、いつまでも夢を追い続けて時間を空費する人。実現する当てがあるにも関わらず、自分を過小評価し、夢物語として何もせず時間を空費する人。
夢と目標は違う
夢と目標は異なる。それぞれの言葉について、国語辞典から引用してみよう。
- ゆめ【夢】〘名〙
- ②将来実現させたいと思っている願い。「─を抱く」「─がかなう」
③現実からはなれた空想。「─を追い求める」
④はかないもの。また、たよりにならないもの。「人生は─だ」「─の世」明鏡国語辞典©Taishukan, 2002-2008
このように、『夢』とは、「実現はなかなか難しいけど、そうなったらいいなぁ」という心にとめておくものである。
例えば、
- 宇宙飛行士になる
- プロスポーツ選手になる
- 俳優になる
- 起業して億万長者になる
- 有名人と結婚する
上に挙げたことは、実現させることが非常に難しい。本人の並々ならぬ努力はもちろんのこと、運・才能や家庭環境など本人の力だけではどうにもならないことも大きく左右する。
次に『目標』を見てみよう。
- もく‐ひょう【目標】〘名〙
- ③あることを実現・達成するためのめあて。「人生の─を立てる」「売上高一千万円を─とする」
明鏡国語辞典©Taishukan, 2002-2008
例えば、
- 年収を50万円アップさせる
- TOEICで800点以上を取る
- スマホアプリを自分で作る
- 海外移住する
- 普通に結婚する
上に挙げたことは、難易度の差や向き不向きこそあれ、本人の努力次第で十分に実現可能だ。実現に必要なことは、本人の強い意志と緻密な計画である。
ある程度の実現可能性があり、それを実現させようと心に誓ったとき、それは「夢」ではなく、「目標」になる。
年収200万円足らずの凡庸なフリーターが「年収1億円を稼ぎたい」「年収2000万円以上のイケメンと結婚したい」と言えば、「何夢みたいなこと言ってんだよ」と言われるのがおちだ。絶対無理とまで言わないが、実現できる可能性は極めて低い。しかし、「年収300万円代の正規雇用で働き、夫婦共働きのごく普通の家庭を築きたい」ならどうだろうか?極めて現実的であり、本人の努力次第で実現できる可能性が高い。
実現可能性が限りなくゼロに近いことと、努力次第で実現できることを一緒くたにするべきではない。
「できない」と決めつけることは自身への呪い
悲観的になって「努力したって無駄」「私には無理」と決めつける人がいるが、そうすること自体、自分自身に対する呪いである。
同様に、「リア充が…」と自分より上の者を妬んだり、逆に自分より下と自分基準の物差しで規定した者を蔑んだりすることもまた、自分自身に対する呪いである。一時のストレス発散になるかもしれないが、それで自分の人生が好転することはありえない。
ドラクエだと、呪われると様々な状態異常を来し、ゲーム進行の支障となる。人生も同じだ。呪われると何もできなくなる。努力を無駄な行為と信じ込んでいる人は、端っから努力をしないから、上に上がることは絶対にありえない。底辺を這いつくばって、辺りに呪詛の言葉をまき散らすのが関の山だ。
ここまで読んで、自身のことを顧みる前に、「そういうお前だって…」とあら探しを始めようとした人、コメント欄(このブログにはないけど)に脊髄反射で「こういう奴は努力厨だな」と書き込む「通りすがり」さん、まさに呪われていますよ。
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子供の頃は万能感を持って、いろいろ挑戦してみるものだが…
前述の夢と目標の違いで書いたとおり、何でもかんでも努力で実現できるわけではない。
子供の頃は、親や先生から「お前には未知の無限の可能性がある」という万能感を据え付けられる。しかし、歳を重ね、失敗・挫折を含めた様々な経験をすることで、「無限の可能性」が「有限の可能性」となり、∞→0に近づいていくことに気付く。つまり、身の程を知るようになるのだ。
もちろん、若いうちは「未知の無限の可能性」なるものを信じて、一心不乱に夢を追うことは大切である。しかし、大人になれば、どうあがいても無理なことを知るようになる。そこで、引き際を知ることの重要性を理解し、地に足のついた目標を持ち、それに向かって努力をできるようになる。逆に言えば、大人になるとは、そういうことでもある。
稚拙な万能感を捨て、できる/できないを振り分けていこう
定職に就いたり、結婚したりすることは、『夢』といわれるほど大げさなことでなければ、難しいことでもない。いくら非正規雇用が3割、生涯未婚率が3割といわれても、正規雇用は7割、婚姻率も7割ある。(高校生・大学生の就職内定率も97%) 大半の人は真っ当に生きている。
非正規雇用・生涯未婚・ニートが増えたのは、稚拙な万能感を捨てきれず、身体だけ大人になった人が増えたのではないかと思う。自分という人間を客観視することができず、いつまでも「一流企業の東京本社オフィスで働くんだ」「結婚するなら年収1000万円以上の優しい男」といった夢想を抱き続ける。
大切なことは、万能感を捨て、等身大の自分と真摯に向き合い、できること(できそうなこと)と、できないことを振り分けていくことだ。そして、できないことは潔くあきらめ、できることの範囲内で努力を積み重ねていくことである。
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