日本の労働環境の酷さは、これまで当ブログで幾度と取り上げてきた。しかし、酷いのは労働環境だけでなく、労働者の待遇にも当てはまる。海外では当たり前だが、日本では未だに実現していない同一労働同一賃金について取り上げる。
同一労働同一賃金とは?
同一労働同一賃金とは、読んで字のごとく、同じ仕事をしていれば、年齢・性別・人種・雇用形態に関係なく、同じ賃金がもらえるという理念である。しかし、日本では、雇用形態が正規雇用(正社員)と非正規雇用(契約社員・派遣・パート・アルバイトなどの非正社員)の2つに分けられ、仕事内容がまったく同じであっても、両者の待遇の差は極めて大きくなっている。
例えば、週40時間のフルタイムで働いている正社員が、仕事内容はそのままで、週20時間働くパートタイマーになったとしよう。この場合、労働時間は半分になったが、1ヵ月の給料は半分ではなく、4分の1になる。これは、正社員の賃金を時給換算で2,000円とすると、パート・アルバイトなどの非正規の賃金は1,000円と半分になってしまうためである。*1 正社員には、保険・年金・各種手当てや福利厚生があるので、それを含めた総合的な待遇差は優に2倍を超える。
正社員と非正社員が、同じ職場で、同じ仕事をしていても、待遇が天と地ほどの差がある。これを理不尽と呼ばずして、一体何を理不尽と呼ぶのだろうか?このような非常識がまかり通っているのが日本である。
同一労働同一賃金の実現ができない理由は?
日本において、同一労働同一賃金が実現できない理由は何だろうか?正社員は、会社への忠誠度が高いとか、仕事に対する責任が重いとか、勤続期間が長いことで身についた仕事の周辺知識や築かれた人脈があるとかがよく言われる。しかし、賃金を支払う対象が、「人(=誰がしたか)」ではなく、「仕事(=何をしたか)」である同一労働同一賃金においては、説得力を持たない。
同一労働同一賃金を阻む要因は、「正社員」という既得権益であろう。非正社員の待遇を、正社員と同じに引き上げることは現実的ではない。そうなると、正社員の賃金を下げることは避けられない。しかし、一筋縄ではいかない。安定性と高賃金を得ている正社員にとっては、同一労働同一賃金実現のため、自分たちの賃金を下げるというのは、なかなか受け入れられるものではない。特に年功序列の恩恵を受けている中高年の正社員にとっては、なおさらである。
第一次安倍政権では、同一労働同一賃金の実現を目指したが、労働組合の反対で頓挫した経緯がある。後の民主党政権でも、鳩山元首相は実現に熱心だったが、民主党の支持基盤が労働組合であることからも、実現はしなかった。
イギリス人「日本は先進国なのに、労働条件は後進国です」
国際労働機関(ILO)では、同一労働同一賃金は基本的人権の1つとして、ILO憲章の前文に挙げている。また、国際人権法でも規定されている。さらに、経済協力開発機構(OECD)は、2008年に日本に対して、「正規雇用労働者と非正規雇用労働者の待遇格差を改めよ」という勧告を出している。*2
同一労働同一賃金に関して、“Spot on!”という記事を見つけたので、紹介しておこう。
日本ではパートタイマーになるとフルタイマーの時給の半分くらいになると説明するとタムジンさんはショックを受けた。
「そんなに少なくなるのなら、働く価値はありません。女性も労働人口の重要な位置を占めているので、日本もイギリスを見習ってほしいです」
有能な女性が家で家事だけをするのは、退屈だとタムジンさんは自分のことのように言う。「日本は先進国なのに、労働条件は後進国です」
(中略)
日本では確実に労働人口が減少している。産休だけではなく、このイギリスの方法を採用することで、有能な女性の労働力を無駄にしないことは日本社会にとって死活問題である。
社会全体を維持するためには、正規労働者の給料など既得権にメスを入れても実行すべきだろう。先進国で正規と非正規労働者の賃金格差がここまでひどい国は日本だけである。
私は、この記事に完全に同意する。労働者を「セーキ」と「ヒセーキ」に分け、待遇で大きな差を付けるとは、時代錯誤も甚だしい。
「アンフェアだ!」怒れ、非正規雇用労働者よ!
あなたがアルバイトやパートなどの非正規雇用労働者として働いていて、すぐ隣に正規雇用労働者がいて、あなたとまったく同じ仕事をしているとしよう。仕事の出来も変わらない。いや、あなたの方が真面目で、仕事もできるかもしれない。しかし、賃金の差は倍近くある。
こんなことがまかり通っているのは、先進国では日本だけだ。*3外国人の友達にこの話をすると、「That’s unfair!!」(不公平だ) と、まるで自分のことのように言われた。当然である。こんなもの、封建時代の身分制度と何ら変わりがない。
もっと怒ろうぜ。声を挙げようぜ。あるいは、いつまでも変わらない国にさじを投げて、海外に出るとか。
- 作者: 竹信三恵子
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