日本という国そのものが老いている。ハード面でもソフト面でも。読売新聞の世論調査でも4人に3人が日本社会の衰退を予想している。
日本は歴史上存在したどの国よりも速いペースで高齢化しており、経済と社会に多大な影響を与えている。では、なぜ日本は適応するための手をほとんど打っていないのか。
(英エコノミスト誌、ヘンリー・トリックス東京支局長)
海外メディアが見る日本の将来
海外メディアで日本の将来について次のように書かれていることを、以前に小耳に挟んだ。
20xx年に日本上空を飛ぶと、「至る所に廃墟が見えるね」「あれは新幹線と呼ばれた鉄道の残骸だよ」「見ろ、あっちは高速道路だ」「工事が何年も止まったままだね」「あっちの橋は落ちたままだぞ」「この国は昔豊かな国だったんだね」と言われるようになるだろう。
日本で報道されることは少ないが、海外メディアからこんな恐ろしい報道をされている日本の将来とは一体何? と考え込んでしまう。ところが、現状を見つめ直すと、あながち嘘ではないように見える。
老朽インフラが凶器となる
中央道の笹子トンネル崩落事故以来「インフラ老朽化」をよく聞くようになった。インフラとは道路・鉄道・水道・通信・電気・学校・病院などの社会を支える生活基盤のことをいう。
インフラは作って終わりではなく、その後の維持補修も欠かせない。維持補修が十分になされていないインフラが凶器となることは知っての通りである。維持補修には、莫大な費用がかかる。*1*2
日本のインフラは、その多くが高度成長期に集中して造られたため、老朽化も短期間に集中して訪れる。また、国土の4分の3が山地のため、維持補修に費用がかかるトンネルや橋梁が多い。
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過疎地域のインフラは1人あたりの維持費も高い
大都市圏のインフラであれば、維持補修に莫大な費用をかけても、経済効果がそれを上回る。しかし、問題は過疎地域のインフラである。住民が1人でもいる以上、行政は住民のために、行政サービスを提供し、インフラを維持しなければならない。山間部の集落であっても、そこに通じる橋梁やトンネルは不可欠であり、それらの維持補修には億単位の費用がかかる。
それらの地域の住民が支払う税金より、その地域への行政サービス提供やインフラ維持にかかる費用の方が高いのは明白だろう。ちなみに、日本には、過疎化で社会的共同生活の維持が困難になっている限界集落が7,873もあり、うち2,641が消滅の危機にあるという。*3
少子高齢化による生産年齢人口の減少、高い法人税率や電気料金値上げを嫌った企業の海外移転、円安による輸入品の価格上昇、アジアとの競争激化による企業収益悪化などにより、 今後も税収が増えることは見込めない。逆に、社会保障やインフラ維持補修で歳出は増える一方だ。家計と一緒で、国の財政にも限りがある。過疎地域の既存インフラまで現状維持し、さらに地方の公共事業をし続ける余裕はない。
やがて集落は廃墟となり、コンパクトシティが増えていく
今後は、既存インフラの維持補修に優先順位を付け、取捨選択する必要がでてくるのではないだろうか。小さな集落から
財政難につき、この集落への行政サービスの提供を取りやめます。住民は近くの大きな町に移住してください。移住しないのは自由ですが、その場合も行政サービスは今後提供しません。学校も廃校になります。道が壊れても補修できません。大変心苦しいのですが、私ども行政には、小さな集落まで行政サービスを維持するだけのお金がないのです。
ということになるだろう。そして、廃墟となった集落に通ずる道は「危険!立ち入り禁止」という立て札が立つようになるのではないだろうか。
住人にとっては、長年住み慣れた町を離れるのは寂しいものがある。だが、住民にとっても、行政にとっても、公共施設を集約する方が効率がよいのだ。実際、集落から都市に移住した人は、病院・市役所・学校などの公共施設、スーパー・レストランなどの商業施設が近くなったことで、「利便性が増して住みやすくなった」と答える人が多い。このような集約して持続可能な町を「コンパクトシティ」と呼び、日本では富山市がモデルケースになっている。*4*5
夕張市に見る日本の将来
以前に英誌「エコノミスト」に、日本の将来の姿として、夕張市が取り上げられた。
財政再生団体に指定された夕張市では、住民がピーク時の10分の1以下に減少し、図書館が閉鎖され、学校が統廃合され、市職員の給与が大幅カットされた。そこに日本の将来の姿が垣間見える。
海外メディアも危惧する日本の将来。社会保障制度があり、インフラが整備された近代国家で、深刻な少子高齢化を迎えるのは日本が世界初となる。その時、一体何が起こるのか、どうなるのかは人類がかつて経験したことがない。
備えあれば憂いなし。私は、海外脱出ではなく、海外脱出準備をしておくことは、間違っていないと思う。すでに、日本の将来を案じて海外脱出に向けて行動する人も増えている。*6
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