PC遠隔操作事件の被告人が昨日(3月5日)、およそ1年ぶりに保釈された。高裁の保釈決定に際し、検察は特別抗告するも、特別抗告する権限のない地検の検察官が抗告したことが分かり、無効となった。そのメンツにだけこだわるお粗末ぶりを露呈した。
日本の刑事司法が中世であることを世間に知らしめた事件
この事件では、4人が誤認逮捕され、うち2人が虚偽の供述をしていたことが分かり、日本の警察の取り調べがいかに常軌を逸している*1かを世間に知らしめた。昨年(2013年)の国連の拷問禁止委において批判された「日本の刑事司法は中世」であることを身をもって世界に証明した。
警察・検察にとっては、汚点を残した事件だった。ネット犯罪に300万円の懸賞金をかけたことからも、警察の必死さがうかがい知れる。もし、これで冤罪(無罪)ともなれば、警察・検察のメンツは丸つぶれだ。
※以前書いたエントリー「冤罪製造マシーンの警察・検察による人質司法は先進国とは思えない」も参考にしてほしい。
検察・警察は「正義の味方」ではない
警察・検察と聞いて、あなたは何を想像するだろうか?悪い奴を捕まえて、法の裁きにかけ、私たちの生命と財産を守ってくれる正義の味方と思う人もいるだろう。
そんなものは幻想に過ぎない。日本の警察・検察が守っているのは、正義なんかではない。ただのメンツだ。もちろん、個々の「お巡りさん」は、地域住民から愛され、困った人を助けてくれる「いい人」も少なくないであろう。しかし、「警察」という組織になった途端に、その性質は一変する。そこにあるのは、優しい町のお巡りさんの姿ではない。メンツと既得権益を守ることしか頭にない、そのためには善良な一般市民を奈落の底へ突き落とすことを屁とも思っていない恐ろしい悪魔の姿だ。
彼らは、「我々は絶対に誤りを犯さないし、誤りはあってはならない。もし、誤りがあれば、誤りを犯してでも、誤りではないということにする」と考えている。
無実の人間を捕まえるというのは、明確な誤りである。人間である以上、誤りを犯すことはある。問題は、誤りを犯した場合の後の対応だ。誤りを犯せば、何が誤りだったのか、同じ誤りを繰り返さないためにどうすればよいのかを考え、実行に移すのが普通であろう。しかし、日本の警察・検察は、「誤りを犯さないし、誤りはあってはならない」が前提なので、証拠の捏造・隠滅、被疑者の拷問、何でもありだ。
そんな自浄能力皆無の日本の病巣である刑事司法制度に鋭く食いついたのが、国連の拷問禁止委の指摘である。
記者クラブでマスコミも権力と癒着している日本
権力を監視するのは、マスコミの役割である。権力が誤りを犯し、それに真摯に対応しようとしないならば、それを徹底的に追及し、世間に報じる。マスコミが第4の権力と言われるゆえんだ。
ところが、今の日本のマスコミは、その役割を十分に果たしていない。「記者クラブ」と呼ばれる、官公庁内部に設けられた、排他的な馴れ合い組織の中でぬくぬくと居座っているのが現状である。
日本のマスコミには、様々なタブーという触れてはいけない暗黙の決まり事があり、その中に「桜タブー」というものがある。警察・検察に批判的な記事を書けば、記者クラブから締め出しを食らってしまうのだ。*2
マスコミは、警察・検察が発表した内容を、彼らの広報機関のように、そのまま報道するだけだ。大本営発表と何ら変わらない。
中国では新聞社が告発者逮捕に一面で抗議したことがあった*3が、日本の新聞が一面記事で、「警察よ、恥を知れ!」などと書くだろうか?日本の新聞社にそんな度胸はないだろう。己の危険を顧みずに権力に立ち向かおうとする姿では、中国の方がまともじゃないか。
日本のジャーナリズムはどこに行ったのだろうか?
刑事司法も労働環境も欧米の足下にも及ばない日本
シャラップ発言の後日談を見てみると、政府関係者は「勧告には法的拘束力がないのだから、従う義務がない(=そんなもの無視すればよい)」という対応である*4。
一時期の反原発デモの盛り上がりとは逆に国民の反応も今一つ芳しくない。その裏には「公益のためには人権蹂躙もやむを得ない」という思想が根底にあるのではないか。公のために私を犠牲にする「滅私奉公」という考え方は、日本の劣悪な労働環境とそっくり重なる。
シャラップ大使は、「中世」との指摘に対して、「日本は、この(刑事司法の)分野では、最も先進的な国の1つだ」と開き直り、嘲笑を買った。この時に「笑うな。なぜ笑っているんだ。シャラップ!」と発言が出た。*5
笑われた理由を教えてやるよ。もし、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)が、「我が国は、民主主義の分野では、最も先進的な国の1つだ」と言えば、みんな笑うだろう。それと同じだから。北朝鮮は独裁国家である。日本の刑事司法は中世である。
世界が驚くハイテクトイレで満足しているようであれば、いつまでたっても「中世」から進歩しない。
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