今日(2月22日)にSONYの新型ゲーム機「プレイステーション4」(PS4)が発売された。しかし、今回はいつもと様子が違う。PS3の時と比べて、盛り上がりに欠けている感は否めない。PS3発売時より価格が安く、アベノミクスによる好況感があるにも関わらず。
かつては大行列が当たり前だった新型ゲーム機の発売日
「物売るっていうレベルじゃねぇぞ」は、PS3発売日に購入希望者が殺到し、大混乱の中で飛び出した。ネット通販では、購入(予約)可能となると同時に即完売した。
2006年11月11日 PS3発売日の様子 (ITmedia +D Games)
今回は、打って変わって非常に静かな滑り出しとなった。ヨドバシカメラやビックカメラといったゲーム機販売の大御所でも、発売日から普通に買えるのだ。今回も、行列こそできていたが、PS3発売時の比ではない。おそらく、数年に一度の「新型ゲーム機を並んで発売日に買う」というお祭りに参加して、その雰囲気を楽しみたいというコアなゲームファンが並んでいるのだろう。
欧米での発売を先行させたSONYの戦略からも、日本国内のゲーム市場が以前と変わったことを実感せずにはいられない。
スマホとソーシャルゲームが据え置き機ユーザーを食っている
PS3発売からPS4発売までのここ7年間で変わったことと言えば、スマホとソーシャルゲームの爆発的普及である。日本では、スマホが据え置き機のユーザーを食っているのは間違いないだろう。
国内では、スマートフォンでゲームをする人が増えていて、去年、家庭用ゲーム機の市場規模は1500億円余りと、ピークだった2007年に比べてほぼ半分にまで減っています。PS4は先行して発売された海外での売り上げは好調ですが、国内市場でも販売を伸ばして、家庭用ゲーム機の復調につなげられるかが注目されます。
ソニー PS4の国内販売開始 (2014/02/22 NHKニュース)
一部メディアには、海外でも、やがて据え置き機はスマホゲームに取って代わられるという記事を見かけたが、私はそうは思わない。
美しい映像が売りのハリウッド映画を、スマホで空き時間にちょっとずつ見たいという人がどれくらいいるだろうか?多くの人は、映画館で見たいだろうし、家で見るなら、なるべき大きなテレビで見たいだろう。制作者もそのようにして見られることを期待している。私はゲームも同じであると思う。
日本で据え置きゲーム機の市場が縮小している5つの理由
PS4、Xbox Oneともに空前の大ヒットを記録している欧米とは対照的に、日本での市場が縮小している理由を探ってみた。
①日本人好みのソフトが減った
据え置き機のソフト開発費は莫大である。ハードの性能が進化するにつれ、ソフトの開発費も高騰する。莫大な開発費の元を取るには、世界中で売れるようなゲームを作る必要がある。結果、日本では売れても、海外では売れないような日本人好みのソフトは少なくなる。主戦場が日本だけということになれば、ソフトメーカーは、ヒットが見込める有名作品の続編ものを中心に作るだろう。
②大画面テレビがない
欧米では、多くの家に大画面テレビがある。日本では、単身世帯ではテレビがなく、ワンセグケータイやPCで代用している人も少なくない。据え置き機がその真価を遺憾なく発揮できるのは、大画面環境であってからこそではないだろうか?さらに、KinectやPSMoveのようなモーションコントローラーは、プレイするのに広いスペースを必要とする。日本の住環境を考慮すれば、大画面テレビも設置スペースがないし、広いプレイスペースも取りにくいのが現状である。
③お金がかかる (主に若年層)
最新ゲーム機は、本体だけで4万円以上はする。周辺機器やソフトも入れると、5万円は下らない。その後もソフトを買う都度、数千円はかかる。基本無料〜月に数百円で楽しめるソシャゲとは大違いである。ケータイやネットに毎月5千〜1万円を費やしている中、さらに初期費用だけで5万円も出して据え置き機を買うとなれば、コアなゲームファンでなければ、二の足を踏んでしまう。
④プレイする時間がない (主にファミコン世代)
ゲームと共に成長したファミコン世代も、今やアラフォーである。年功制が相変わらず幅を利かせている日本では、歳を重ねるほど、仕事に費やす時間も増える。家庭でも、家族がいれば自由な時間は少なくなる。まとまった時間を要する据え置き機でゲームする時間は少なくなった。
他方、隙間時間に手軽にプレイできるスマホゲームは、多くの世代に親しまれている。特にスマホでリリースされたドラクエアプリが大ヒットしたことは記憶に新しい。
⑤一緒にプレイする人がいない
据え置きゲームの醍醐味は、迫力ある大画面以外に、楽しい時間を共有できる仲間が物理的に近くにいることだ。ネットで仲間と繋がっているといっても、すぐ隣に一緒にプレイする仲間がいるのといないのとでは、盛り上がりが全然違う。
ファミコン世代は、前述の通りプレイする時間がない。若い世代は、ゲーム自体に興味がないか、スマホのお手軽ゲームを好む。小中高生はスマホか携帯ゲーム専用機。なかなかプレイヤーが重ならない。
ゲーム業界までガラパゴス化?
欧米では大ヒットにも関わらず、日本では以前ほどではないという事実は、何を物語っているのだろうか?
ワークライフバランスが取れない労働環境?ネットの充実ぶりとは裏腹にリアルで孤立している「おひとりさま」の増加?ワーキングプアの増加?
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