「酒は飲むとも飲まれるな」ということわざがある。「酒を飲むのは構わないが、飲み過ぎるな」という戒める意味である。同じことがネットも当てはまる。
「手段」としてのネット利用と、「目的」としてのネット利用
ネットの使い方は、大きく分けて2つある。「手段」(道具)としての使い方と、「目的」としての使い方である。
前者は、ネットを目的を達するための一手段として使うことだ。論文のためにWikipediaや辞書サイトで検索したり、旅先で観光名所を調べたり、レストランを探すために食べログで検索したり、本やチケットを買ったり、スポーツ仲間を見つけるために地元のサークルを探したりすることなどがこれにあたる。この手段としてのネットは実に有用である。
後者は、各種掲示板やSNSの閲覧・投稿のように、ネットを使うこと自体が目的となっている使い方だ。
目的としてのネット利用は非生産的
目的としてのネット利用は、暇つぶしにはなるが、生産的ではない。そういった意味ではテレビやゲームと同じである。しかし、それらと違うのは、ネットは双方向であり、あなたの発言に、リアルタイムで反応が返ってくることだ。「誰かとコミュニケーションを取りたい」という人間の本能的欲求に重なり、依存症に陥りやすい。日常生活に深刻な影響を及ぼすケースもある。そこまでいかなくても、気が付いたらPCやケータイを開いていて、ついつい長ネットしてしまったという場合も多いだろう。
“つながり”から抜け出せない 〜広がるネットコミュニケーション依存〜 (NHKクローズアップ現代)
『ウェブはバカと暇人のもの』
『ウェブはバカと暇人のもの』という本がある。私はこれを読んで、あまりの'Spot on’ぶりに感心してしまった。出版されたのはmixiが旺盛を極めていた2009年だが、この本に書いてあることはそっくり現在にも当てはまる。
- 作者: 中川淳一郎
- 出版社/メーカー: 光文社
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SNSでは「今日のお昼はラーメン♪」「美味しそう∈^0^∋」「22人が『いいね!』と言っています」という他愛もないやり取りがなされ、匿名掲示板では「お前在日だろ」「ネトウヨうざい」といった辛烈な会話が飛び交い、飲食店のバイトがおバカぶりを自慢してブログを炎上させる様は、今も昔も変わりない。
当人たちにすれば、他愛のない会話も、議論と称したただの罵り合いも、正義の味方気取りのお叱りも、気に入らないブログを集団で押しかけて炎上させるのも、時間が忘れるほど熱中できるものだろう。しかし、それらは生産的でも実用的でも健康的でもない。暇つぶしを超えて長時間するのは時間の無駄であるように思う。
ネットに飲まれないために
BBSやSNSなどの必然性の低いネット利用は、朝晩2回で30分ずつとか、電車での移動中のみとか、昼休みだけとかのようにして、自分で時間を決めよう。それ以外の時は、「○○という言葉の意味をネットで探す」「○○をネット通販で買う」といった明確な目的がない限りネットを使わないようにする。使い終われば、さっさとブラウザを閉じよう。
どうしてもネットから離れられない場合は、子供用のフィルタリングソフトをインストールし、自分自身のために利用時間や利用するサイトを制限することをおすすめする。設定変更に必要なパスワードは、家族や友人に管理してもらうか、リマインダーサービスを使って指定時間に自動的にメール送信されるようにすればよい。
やっぱりネットよりリアルの方が楽しい
私が海外に出たときに初めて住んだ家は、ネットがなかった。当時はスマホも一般的ではなかった。そして、ルームメイトに誘われるまま、よく外に出るようになった。
その時に感じたことは、「ネット上のコミュニケーションより、五感をフルに使ったリアルなコミュニケーションの方が100倍楽しい」である。実際、次のような統計もある。
スウェーデンのヨーテボリ大学の研究者らによると、Facebookは、低学歴で低収入な人ほど、使用頻度が高く、1回の利用時間も長い。さらに彼らの大多数が、「幸福感や人生の満足度が低い」と回答した。
低収入&低学歴である人ほどハマってしまう!? 数字で見るFacebookユーザーあれこれ (ロケットニュース24)
日本に限らず、暇さえあれば、ところ構わずケータイと睨めっこする人たちが増えている。ケータイに夢中になっている人は、そのお陰で大切なことを見逃しているのかもしれない。すぐ先に穴があっても気付かないし、素敵な異性があなたを好意を抱いていても気付かない。
携帯操作で気付かず踏切進入?電車にはねられ男性死亡 東京・板橋 (MSN産経ニュース)
スマホを忘れて外出したら、気分はまるでアドベンチャー! (日経BPネット)
ネットは、しょせん道具に過ぎない。ネットを使いこなしても、ネットにのめり込まないようにしよう。
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