社畜が好きこのんでよく使う言葉に「協調性」がある。ところが、この協調性という言葉が、日本と海外では解釈の仕方が異なっていて、日本の「協調性」はガラパゴス化しているように見える。
協調性ってそもそも何?
協調性という言葉を辞書で調べてみた。広辞苑には「周囲の人とうまく協調できる性質」とあったので、さらに協調という言葉を調べてみたら、次のように書いてあった。
- きょう‐ちょう【協調】
- (協同調和の意)
①利害の対立する者同士がおだやかに相互間の問題を解決しようとすること。「労資─」「国際─」
②性格や意見の異なった者同士が互いにゆずり合って調和をはかること。「─性に欠ける」広辞苑 第六版 ©2008 株式会社岩波書店
ところが、社畜がよくいう協調性は、上記のいずれにも当てはまらない。社畜のいう協調性とは「少数派が有無を言わず、おとなしく空気を読んで多数派に従う性質」である。つまり、「協調性=同調性」であり、他人に協調性を求めることは、ただの同調圧力に他ならない。
独自形式の履歴書をPCで作成したら「協調性がない」、自分の仕事をがんばって定時までに終わらせて上司より先に帰ったら「協調性がない」、会社の飲み会に参加しなかったら「協調性がない」、会議のような議論する場所で多数派に反対する意見を述べたら「協調性がない」などなど日本的協調性の例を挙げると、枚挙に暇がない。
慣習に従わない人や反対意見を言う人などの、少数派や一匹狼を非難するための言葉が「協調性がない」だろう。この「協調性がない」を若者言葉で言っているのが「空気読めない」(KY)であろう。
海外で見た本来の意味での協調性
海外の職場では連日定時退社・休日出勤なし・有給完全消化が一般的となっているが、残業がまったくないわけではない。一例を挙げよう。
あるクリスマス前の日のことだ。私が、Amazonで注文した商品が、いつまでたっても届かない。追跡番号で、配送業者のサイトからトラッキングしてみると、集配所で止まったままだ。その上にお知らせページへのリンクがあって、見てみると「大雪のため、配送が遅れています。クリスマスまでにお届けできるようにスタッフ一同最善を尽くします。」とあった。この時は、クリスマスまで1週間しかなく、臨時スタッフを雇う時間的余裕など存在しなかっただろう。おそらく残業や休日出勤が行われていたであろうし、従業員の多くが時間外労働に協力したであろうことは容易に想像がつく。当然、残業が嫌な人もいたことだろう。だが、多くの従業員は次のように考えたはず。
「クリスマスまでに荷物を届けることはできなくなれば、多くの消費者はがっかりし、苦情がAmazonにも殺到する。そうなれば、大口取引先であるAmazonに契約を打ち切られ、売り上げにも大きな影響が出るだろう。その結果、従業員の減給や解雇をしなければならない可能性がある」
「自分が子を持つ親だったら、年に一度の特別な日に、子供たちが悲しむ顔を見たくない」
このケースでは「仕事」と「プライベート」という利害が対立したが、仕事を優先した方が、結果として自分にとって利益になる(不利益を被らない)と考え、多くの従業員が残業に協力したのではないか。
ちなみに、海外で残業が発生するのは、このように例外的な時だけである。一部のエグゼクティブと呼ばれる上級管理職をのぞき、日本のように残業が常態化しているなんてことはない。
「必要なときには、団結して力を合わせる」これこそが、世界共通の協調性の考え方である。ところが、日本の協調性はガラパゴス化していて、「オレ達が苦労しているのに、お前だけ楽しているのは許せない」のように単なる足の引っ張り合いになっている。このことが、前回の記事で取り上げた「病気でも休めない日本社会」を生み出しているのではないか。
国際的協調性ゼロの日本企業
社畜は何かにつけて協調性協調性とバカの一つ覚えみたいに連呼するが、それなら日本的解釈の「協調性」という言葉を使って、社畜に言おう。
サービス残業や有給なしを平気で強要する企業の方が、よっぽど国際的協調性が欠けているよ。そんな企業が、「これからはグローバリゼーションの時代だ」などと言って、「TOEICスコアxxx点以上」を社員や新卒に求めたり、公用語を英語にしたりする姿は非常にこっけいだ。社畜が、(日本的な意味での)協調性に欠ける人と働きたくないように、外国人も国際的協調性に欠け、まともな労働環境を提供しない日本企業なんかで働きたくないから。
とね。
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