米大手旅行会社「エクスペディア」の「有給休暇国際比較調査2012」によると、日本人の有給消化率・消化日数ともに最下位で、38%で5日だそうだ。
日本と同じマジメな国民性で知られるドイツですら有休消化率は95%で28日。まるまる使ったら、1ヵ月半という学生並の夏休みを取れる。日本はたったの5日だが、実際はやむを得ない理由で使っている人が多いだろう。
日本になくて海外にあるもの—「有給病欠」
海外には ‘Sick Leave’ という有給扱いの病欠休暇がある。これは、本来の有給とは無関係に与えられるので、「朝起きたら微熱があった」といった場合は、この制度を使って休む。与えられる日数や条件は国や会社によって異なるが、家族が病気の場合でも使え、数日程度なら医師の診断書が不要なのが一般的だ。
日本ってそんな制度あったっけ? 聞いたこともないって人が多いのではないかと思う。日本では、病気になっても、有給から消化していくしかないのが現状ではないだろうか。病気に有給を使えるならまだいい方で、会社によっては「有給申請は2週間前から」といって、無給の欠勤扱いにする場合もある。
病気で休む場合も、「自分が休むことで、会社に多大な迷惑をかけている」と自責の念にかられながら休まなければならない。遊ぶために有休を取るなんて「社会」をなめた行為でもってのほかというのが日本人の考え方なのだろう。
遊びで有給取ったら「社会人としてなっとらん」、病気で有給取ったら「体調管理がなっとらん」って怒られる。ブラック企業だったら、病気になっても一日分の給料を上回るタクシー代を払ってまで出勤しなければクビになる*1。そんな国、世界のどこにもないから。日本を除いてはね。
そこまでして優先しなければならない仕事って何。ああ救世主なる仕事様ですか。労働教の教義に「労働教信者は一日にして休むべからず」とでも書いてあるんだろうな。(笑)
子供の頃から皆勤賞?
「休んではいけない」という労働教の教義は、実は子供の頃から仕込まれている。幼稚園から「皆勤賞」なる賞まで用意して、「休まずに頑張ることは偉い」という考え方を子供に植え付けているのだ。小学生に上がったら、
「社会に出たら、少々の熱があっても会社に行かないといけないんだぞ」
「社会に出たら、夏休みなんてないんだぞ」
「1日休んだらそのぶん勉強が遅れるでしょ。クラスメートや先生にも迷惑がかかるんだから、学校に行きなさい」
のようなことを親や先生から言われ、いかに休むことがいけないことかを教え込まれたのではないだろうか。
さらにテレビCMでは、栄養剤を飲んで仕事に励んだり、風邪薬を飲んで出勤する姿を「あれこそがシャカイ人の鏡だ。かっこいい」と言わんばかりに放送して、休まず頑張る姿を美化する始末。
日本人は、このようにして労働教に毒されていくのある。もう異常としか言いようがない。
休むこと=悪と見なす風習がみんなを不幸にする
社畜は、「少々の風邪でも出勤するのが社会人としての常識だ」と言うが、海外では風邪の場合は休むのが常識であり、人としてのマナーだ。
- 集中力は、普段より確実に落ちている。その結果、ミスが増えたり、作業効率が落ちたりして、生産性が落ちる。機械操作を伴う仕事ならば、重大事故の引き金にもなりかねない。
- 混雑した電車・バスの車内や職場で他人にうつす危険性がある。
- 無理しても、こじらせるか、症状を悪化させるだけ。軽い風邪ならば、1〜2日安静にしていれば治る。
休むほどの病気ではなく、体調に異変を感じているが、仕事が忙しく病院に行く暇がないっといったケースも少なくないだろう。万一、大きな病気の前兆であっても、早期であれば大事に至らなくてすむケースが多い。放置していれば、その間にも症状が悪化し、ある日突然倒れ、救急車で搬送されるということも考えられる。最悪の結果が過労死といえよう。
救急車の出動費も、医療費も、すべて国民の税金からまかなわれている。「休むことを悪と見なす」日本の悪習が、大きな社会的損失をもたらし、結果として私たち全員を不幸にしているのだ。
ちなみに日本の労働生産性は、OECD平均を10%下回っており、先進国の中では最下位であるという事実もある。サービス残業が蔓延し、多くの労働者が有給捨ててまで働いているのに、生産性が低いということは、カンニングまでしたガリ勉君の試験結果が、平均点より低いのと同じではないか。
日本人よ、もっと合理的になろうよ。人間は機械ではないのだ。
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